もうご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、5月12日にゴマフアザラシの「天洋1(愛称:天1)」が永眠しました。「天1」は1976年 3月28日生まれで、先日47歳になったばかり。国内飼育下繁殖個体では飼育記録を更新中でした。誕生日当日、みんなで「 50歳になっても元気そうだよね」と話していただけに、お別れの日がこんなにすぐに来るなんて誰も予想していませんでした。
私が「天1」の担当になってから約 6年。最後の約 2年はメイン担当として、「天1」のためにできることを毎日考え、元気に余生を過ごせるように奮闘してきました。元気に過ごしてもらうためには健康管理が一番大切と考えた私は、とにかくいろんな検査ができるように「天1」とともに練習をしてきました。
毎日の体温測定、月に 1回の採血・採尿・超音波検査、他にも不定期で心電図検査やレントゲン検査もおこなっていました。最近は検査ではありませんが、健康のためにお日さまの下で日光浴できるようになれたら、とお散歩の練習もしていました。
おばあちゃんになってから、さらに目が見えなくなってからできるようになったことがたくさんあります。
目が見えないため、私たちの声を合図にコミュニケーションをとれるように練習もしてきました。「お」と言えば陸に上がり、「プ」と言えばプールに入ります。その中でも「け」と言うと敬礼をする「天1」の姿が忘れられません。練習を始めたころは自信がなかったのか、迷いながら応えてくれていました。でも、ある日から自信をもって一生懸命応えてくれるようになりました。日々できることが増えていき、そんな「天1」が本当にすごい!と担当者みんなで常々言っていました。
これだけ長く生きていてくれたので、たくさんのトリーターが担当していました。どの担当者に話を聞いても、「天1」は穏やかで、いつも元気と癒しをくれたと言います。トリーターの心のオアシスになっていたと言っても過言ではないかもしれません。
ですが、「天1」に泣かされたこともあります。
5年ほど前に、大学の先生にお願いして心電図検査をしようとしていたときのこと。先生が来館される日までの練習はばっちり。「よし、本番だ!」となったとき、聞いたことのない声やたくさんの声にびっくりした「天1」は、トリーターのところへ来てくれなくなってしまい、その日の検査は泣く泣く断念。「今までの練習じゃ全然足りないぞ」とそのときに「天1」に教えてもらいました。
ここ 3年ほどは体調を崩すことなく過ごし、最後の最期まで元気でいてくれて、「天1」と一緒に過ごせたことに本当に感謝しています。
これからも老齢個体と向き合うことが増えてくると思います。そのときには「天1」が教えてくれたことを忘れずに活かしていきます。
これまで「天洋1」を応援してくださったみなさま、本当にありがとうございました。
「天1」、47年きっといろんなことがあったよね。47年の中のほんの一部でも、一緒に過ごせたことがめちゃくちゃ嬉しい。
そしてトリーターみんなに元気と癒しをくれて、本当に本当にありがとう。
ゆっくり休んでね。