2024年04月30日
トリーター:小形

チッチとの大切な時間

私がフンボルトペンギンたちを担当するようになって、もうすぐ9年がたとうとしています。この年月の長さに驚きを隠せません。。実は私は学生時代に2年ほどクラゲの飼育業務をアルバイトでやらせてもらっていたことがあり、それがきっかけで、えのすいで働くことになりました。

そんな私が最近心がけていることは原点に立ち返る事です。なぜこの仕事を選んだのか、なぜこの場所で働きたかったのか、そんなことを毎日考えながら仕事をするのってなかなか難しいです。でも時々原点に立ち返って考えてみると、毎回大事なことを思い出します。そしてなんとなく良い気持ちになれるんです。

最近はプログラムのスケジュールの関係で、午前中に時間のゆとりが少しあります。最近なかなかペンギンたちと遊んだり観察したり、そういった時間が取れていなかったなと思い、積極的にペンギンたちとの時間を過ごすようにしています。特に毎日触れ合う時間を作っているのは、現在歩けなくなってしまい裏のスペースで生活している「チッチ」です。

「チッチ」は朝は他のペンギンたちと一緒に泳ぐ時間がありますが、泳ぎが終わるとそこから夕方までは1羽で生活しています。話すこともできないので当たり前かもしれませんが、文句も言わず、お腹の擦れ防止用の洋服も毎日着てくれて、本当に偉いなぁと感心してしまいます。野生下だったら淘汰されてしまうようなハンディキャップがありますが、飼育下という環境である以上、「チッチ」のためにできる最善の方法で毎日生活してもらい、「チッチ」を通して伝えられることをお客さまに伝える使命が私たちにはあります。

「チッチ」は生まれつきのハンディキャップのせいもあり、陸上で素早く動くことはできません。以前ペンギンたちの給餌中にガラスの外で大きな物が動き、ペンギンたちが驚いて一斉にプールに飛び込んだことがありました。そんな時、「チッチ」だけはその場を動かず構えていた姿がとても印象的で今でも鮮明に覚えています。物理的に動けなかっただけかもしれませんが、「チッチ」の強さが見えた瞬間でした。そんな「チッチ」は歩けなくなってからも更に強い姿を見せてくれるようになり、私は彼女に励まされることが多多あります。

そんな「チッチ」に何かできたらなと思い、最近は毎日頭を羽づくろいしてあげる時間を作っています。夜間一緒に寝ている「マリー」と羽づくろいし合う姿も時々見られますが、日中は誰も「チッチ」に羽づくろいすることができないので、私が「マリー」の代わりにやってあげています。

時々触る場所が気に入らないと文句を言われることもありますが、とても気持ち良さそうにしてくれるんです。こんなに至近距離でカメラを向けてもこの表情です。


この4月で27歳になり、眼も白内障が進んで見えづらくなっていますが、「チッチ」がこの先も彼女らしく生活できるように、日々向き合っていきたいです。そしてどんな時も初心に立ち返り、動物たちと過ごす時間を大切にできるトリーターで居続けられるよう心掛けて頑張ります。

ペンギン・アザラシ

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