2024年10月25日
トリーター:大下

海草

みなさん、前回のトリーター日誌でご紹介した海藻「ナガオバネ」はご覧いただけたでしょうか? 期間限定と言いましたが、予想に反して成長し続けており、かなり太く長くなりました。

さて、今回は海藻(かいそう)ではなく、海草(かいそう)のアマモについて、お話しします。
えのすいの展示にもありますが、アマモの特長は葉が細長く、緑色をしています。相模湾でのアマモの生息状況ですが、壊滅的な状況です。漁師さんに聞いても「アマモは見なくなったよ…」という返答ばかり…。

当館では展示のアマモを維持しつつ、採集等で海岸や港に行った際、偶然に流れ着いていたアマモを回収して展示に足しています。
しかしながら、このように偶然に頼るのは先行きに不安がありますので、新たな方法はないか? と思っていました。
これもまた偶然にはなるのですが、6月に採集へ行ったときにアマモの花枝や花穂(種が入ったサヤ)が海岸に打ちあがっており、持ち帰って種を取り出せる可能性があるので、種からの生育に挑戦することにしました。
画像はアマモの花穂になります。すでに緑色の種があるのが、分かりますでしょうか?

この状態では早熟ですので、持ち帰ったアマモの花枝や花穂をネットに入れて、アマモの展示水槽の裏に沈めて、2か月間熟成させました。
そして、2か月経過するとサヤから種が外れて、色も黒っぽくなります。

取り出せた種は全部で 304個でしたが、さらに良質な種を選別する工程を踏んで、最終的には52個の種を取り出すことができました。
次はこの種から、発芽してくれるのか? と、少し不安を持ちつつ、種まきです。

結果はこちら!

3個の種から発芽しました!!(画角の都合で 2株しか写っていませんが…)
しかし、最初に取れた 304個の種から、3個のみ発芽…
私としては、種が果たして取り出せるのか? も分からず、発芽はしないだろう…と予想していたので、初めてにしてはまずまずの出来栄えというのが感想です。
今回、種から発芽までのいろいろな工程の中で、それぞれの段階で改善できる点を得ることができましたので、来シーズンは良い種を取り出す個数は確実に増やせると思います。

初の挑戦で、何とか発芽までたどり着くことはできましたが、ここで終わりではありません。発芽したアマモを生育させなければならないので、同時にある程度、生育したアマモを使用して、ちゃんと生育するのか? も同時に試みています。

画像はアマモとコアマモ(細い葉の方です)になります。
この海草は先週、海岸に打ちあがっていたのですが、根が付いているのが多く、比較的良い状態でした。
そして、私がアマモの生育に適すと考えた土に植えています。期待も込めて、何となくではありますが、成長している感じがありです!

今回の挑戦を踏まえて、いずれはえのすいで、種からたくさんのアマモを生育して、相模湾に植え込むことができれば、最高だと思っています。
次回は 1年後ぐらい後になってしまうとは思いますが…、アマモの生育の進み具合はトリーター日誌で紹介します。ご期待ください。

相模湾ゾーン

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