2025年04月20日
トリーター:亀谷

一年が経ちました

みなさん、こんにちは。 獣医師の亀谷です。
新たな年度が始まり、この “えのすい” に勤務して二度目の春を迎えました。
昨年度を振り返ってみると、最初の半年は気づかないうちに過ぎ去っており、残りの半年もあっという間に過ぎ去りました。
風のように過ぎたこの一年間でしたが、できることは少しずつ増えてきたように感じます。

写真は、バンドウイルカ「シリアス」のエコー検査中の風景です。 ブリーディングプールでのエコー検査は、アクリルに高さがあるため台に乗って行います。

人間のエコー検査であれば、検査機器のモニターに映っているエコー画像を見ながら医師がプローブを当てますが、イルカだと体勢的にそれができませんし、そもそも日差しがまぶしすぎて画面の映像が見えません。
屋外と屋内でモニター画面の見え方を比較してみました。

左は屋外で撮ったモニター画面の写真です。 エコー検査を実施する際は浸水対策で袋を被せていることもあり、右の屋内で撮った写真と比べるとさらに何が映っているのかよく分かりませんよね。

そのため、 “えのすい” ではモニターの画面が投影されるゴーグルを装着してエコー検査を行います。 ゴーグル越しにモニターを見ることができる感動は今でも鮮明に覚えています。
最新の機器に疎い私には近未来を体感しているようでした。
最初はどこに当てても目的の臓器を映し出せなかったエコー検査。
未だにうまくいかないときもありますが、最初のころに比べると早く検査を終えられるようになりました。

こちらは、ハナゴンドウ「ビーナ」の採血中の風景です。

イルカの採血は、ハズバンで行います。
ハズバンとは「ハズバンダリートレーニング」の略称で、医療行為やさまざまケアを行うのに必要となる動作を強制的にではなく、動物側に協力してもらいながら実施するためのトレーニングのことです。
動物と人が安全に検査を行うにはこのハズバンが非常に重要です。 私が採血を行えるのは、この検査を実施するためにトリーターと「ビーナ」がトレーニングを重ねてくれたおかげなのです。
採血ひとつにしても、この一年で多くのことを動物たち、そしてトリーターたちから学びました。
みなさんは、病院で採血するとき、注射針を見ると少し緊張しませんか?
実はイルカも一緒なのです。
本番の採血日に向けて日々練習を重ねますが、当日を迎えると私が緊張しているのが伝わるのか、練習通りにいかないことがあります。
きっと、本番を意識した私のささいな立ち振る舞いの変化を動物たちは感じとるのでしょう。
昨年度は “採血で緊張しないようにする” を個人的な目標に掲げるほどでした。
入社して初めて採血した日からもうすぐ一年になります。 あの日と比べて決して緊張しないわけではありませんが、動物たちに緊張が伝わらないようにすることは少しずつできてきました。


他にもさまざま検査を “えのすい” でくらす動物たちとおこなってきました。
動物の健康管理のために実施したたくさんの検査は、動物の健康を守るといいつつ、私が学ぶことばかりでした。 何年経っても動物たちが教えてくれることを学び尽くすことはないでしょうが、動物たちから学んだことをこれからもっともっと還元していけるように今年度も頑張ります。

水族館における獣医師の大きな役割は動物の健康を守ることですが、水族館の大きな役割の一つに、お客さまに生き物がもつ魅力を伝えるという使命があります。
昨年度は“えのすい”に来場したお客さまと直接対面するお仕事がありませんでしたが、今年度に入ってから「イルカと握手」の前説をおこなっています。

イルカを見るお客さまの反応や、ふれあいプログラム「イルカと握手」を楽しみにするお客さまの姿を見て、昨年度はあまり意識していなかった“来場したお客さまに健康で元気な姿の動物たちをお見せする”という意味での動物の健康管理の大切さを改めて感じることができました。

イルカショースタジアム

RSS