2025年06月15日
トリーター:園山

最初の水槽にいる小さい生き物

新江ノ島水族館の水槽は大小さまざまあり、展示している生き物もまた大小さまざまです。 そんな常設展示で最初のこの水槽は、相模湾ゾーン 相模湾大水槽の「出会いの海」。
水槽横から波が起き、その波に多くの生き物が逆らって泳ぐ姿を見ることができます。 その波のようすからも、磯をイメージしやすい水槽となっています。

そんな「出会いの海」に最近登場した生き物がいます。
それがこのタマキビの仲間。 大きさは大きいものでおよそ5mmくらい。
水槽のどこにいるかというと、なんと水の中ではなく岩の上です。
これは実際の磯でも同じで、潮間帯や海水が少しかかるくらいの岩の上に固まって棲んでいます。
先日出版された「江の島むせきつい 海岸どうぶつ図鑑」の30ページに載っていますので見てみてください! 一種のみではなく複数種います。

タマキビの仲間は普段から磯へ観察や採集に行くときに、どこでも見かける生き物の一つです。 そんなどこの磯でも見ることのできる生き物が、磯の水槽にいない!! これは由々しき事態です。
ということで、展示するに至りました。

このタマキビの仲間を展示するときに、水槽のどのあたりに配置しようかなと思っていましたが、なんせ小さく、殻の中に入っており、こちらの都合よく張り付いてくれるわけではありません。 なので、自分たちでよいところに移動してもらおうと、水槽の中にそのまま入れました。 すると、あれよあれよという間に、岩を登っていき、数日で今の形に落ち着いています。 みなさんの見える場所に落ち着いてくれ、一安心です。 赤丸のついているところに集まってます。

最近のトリーター日誌を見ていると、水槽の変化を伝えているものが多くありますね。
私のこのトリーター日誌も例にもれず、そんな内容ですが。

水族館の展示は、環境を見せる展示や、生き物そのものを見せる展示などさまざまありますが、水槽に新たな生き物を展示する場合、当たり前ですが、私たちトリーターは目的をもって展示しています。 今回の私のタマキビの仲間はより実際に磯のイメージに近づけたかったため、また水の中ではなく、海面上で生活するその独特の生態を間近で観察してもらいたいという思いからです。
このタマキビの仲間を展示したくらいでみなさまの心をつかめるとは思っていませんが、何も目的意識のない水槽では、お客さまの心をつかむことはできません。

私たちは、全国の水族館の「よくある水槽」ではなく、“えのすい” だから見せることができる、感じさせることができる、私たちトリーターにしか魅せることができない、そんな展示水槽があふれている “えのすい” にしたいと考えています。
前回ご来場いただいた時より、次はさらに良くなっている、その次も、その次も、、、、
私たちトリーターは探究心を常に持ち、少しずつでも着実にその目標に向かって進んでいきます!
きょうも生き物たちを見ながら、どんな生き物を、どんな見せ方をしようか考えています。

相模湾ゾーン

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