2025年08月15日
トリーター:霜鳥

アンドンクラゲの飼育

最近の私のお気に入りは、現在クラゲファンタジーホールの入り口で展示している「アンドンクラゲ」です。 透明に透き通った傘はなんだか涼しげで、夏にぴったりのクラゲだなぁと思っています。
きょうはそのアンドンクラゲの飼育についてお話を。

私がまだえのすいトリーターになる前、昨年の夏に、初めて自分でアンドンクラゲを採集しました。


当時は海なし県に住んでいたので、仕事終わりに車を1時間半ほど走らせて、夜の漁港へと出かけました。
どんなクラゲがいるかなー と水面をのぞき込んでみると、懐中電灯の光に反応したのか、アンドンクラゲが集まってきました。 次はいつ海に来られるか分からないし… と思い、その場で2個体ほど採集し、自宅に持ち帰りました。
ですが、自宅にはクラゲを飼育できるような水槽はないし、海水もなければ、餌もありません。 まぁとりあえずキープしてみて、どんなクラゲなのか間近でじっくり観察できればいいか、と気楽に飼育してみることにしました。

クラゲの飼育というと、一般的にはクラゲが沈んでしまわないような「水流」をつける工夫が必要なのですが、アンドンクラゲを観察してみると、ふわふわ漂うクラゲとは違い、自らの力でぐんぐん泳ぎます。 ただ単に水を張っただけのバケツでも、問題なく泳げるように見えました。

アンドンクラゲは毒の強いクラゲです。
小さな動物プランクトンを食べるミズクラゲとは異なり、小魚を捕まえて食べることもできます。 自宅の水槽で飼っていた小さな川魚を触手に付けてみたら、魚は毒でしびれて動けなくなり、そのまま死んでしまいました。 ですがさすがに魚一匹丸ごとでは大きくて食べられなさそうだったので、小さな切り身を与えたところ、すぐに食べました。

そんな風にして、ただのバケツに人工海水を張って1匹ずつクラゲを入れ、適度に餌を与え、ようすを見ながら水換えをして、2週間ちょっとの間、アンドンクラゲを生かすことができました。

その当時、えのすいではアンドンクラゲをあまり長く飼育することができていなかったようです。 水流のある水槽で飼育していたことにより、一か所にクラゲが固まってしまったり、壁にぶつかって傘の形が変わってしまったりしていたようでした。

私の試してみた「止水飼育」の話を伝えてみたところすぐに採用され、アンドンクラゲの展示期間を延ばすことができた、と教えてもらい、とてもうれしかったことを覚えています。

今年の夏、展示しているアンドンクラゲたちも、水流をつけずに飼育をしています。
7月 31日から飼育を開始したので、ちょうど2週間を過ぎましたが、現在も元気に過ごしてくれており、広い円柱水槽を悠々と泳いでいます。
今年はどれくらいの期間、みなさまにお見せできるでしょうか。

毎朝餌をあげにいきますが、葉状体ようじょうたい(傘の下に伸びている、触手の生えている根本のところ)の近くに餌をつけてあげると、そのまま葉状体を折りたたむようにして口に運ぶようすがとても面白いです。


なかなかピントが合わずすみません… 。
開館直後ですと、そのようすが実際にご覧いただけるかもしれません。

また、バックヤードには、1匹だけですが幼体がいます。
傘が5mmもないくらいの大きさで採集されてきたのですが、毎日こつこつと餌を与え、1cm以上の大きさになりました。
順調にいけば展示水槽のほうに合流できるかな? と思い、ひそかに育成に挑戦しています。

この一年の間にアンドンクラゲのとりこになってしまいました。
まだまだ探求したいことがいっぱいです。

クラゲファンタジーホール

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