2025年10月19日
トリーター:園山

隠れキャラの主役(?)

みなさんは、えのすいにどのくらいの頻度でご来場いただいていますか? 遠方の方であればなかなか頻繁には来れないと思いますが、おうちの近所だったりすると、何回も足を運んでいただける方もおられます。ありがたいですね。
生き物のようすは日々違い、私たちトリーターも新しい発見があります。それに加えて、展示している生き物も日々更新しています。

少し前から「マエソ」の展示を始めました。
このマエソはえのすいで初めて展示したわけではないのですが、個人的に好きな魚でもあり、前から展示できないかなとひそかに考えていた魚です。

展示用の魚を収集する場合、定置網に乗船させていただくことがあります。入る生き物の種類もその漁獲量も、日により多い、少ないはありますが、マエソについては、定置網によく入ります。
ただし、入るからといって簡単に生きた状態で水族館に持ち帰れるわけではありません。マエソの場合、とても繊細な魚で、生きた状態で持ち帰るには網を絞りきる前にすくう必要があります。

どういうことかというと、
定置網は何百メートルという長さの網を、機械や人力で徐々に絞っていき、中に入っている魚を一か所にまとめて、大きな網ですくいます。そうすると網の中でさまざまな魚たちがひしめき合うため、鱗が剥がれたり、ひれが裂けたりし、体が傷ついてしまいます。
もちろん食用にするには問題ないのですが、水族館に生きた状態で運び、展示しようと思うと、その状態ではちょっとキビシイ…
鱗は再生するのですが、鱗がはがれて傷ついた状態だと、感染症にかかる可能性や、脱水症状を起こし、長期間飼育できません。マエソの場合は鱗が特にはがれやすいのです。

ではどうするか。これは単純。定置網で網を絞りきる前にすくう! です。
定置網は先ほども書いたように何百メートルもの大きな網です。簡単に絞っていけるわけではありません。何人もの漁師さんがせっせと網を絞っているなか、その網の中を眺めていると、マエソが浮いてきます。マエソは底生の魚なので、網が動くとびっくりして泳ぐのでしょうか。水面付近に上がってきたところを素早くすくい、水の入った容器の中へ。また、鱗がはがれないように可能な限り水ごとすくい、移動します。

そんなこんなで、注意を払いながら、頑張って展示したマエソがこちら。

目立たないですねぇ…
たまに石の上に乗っていることもあるのですが、基本は砂の中。よく見ていただければ砂から顔をのぞかせているようすが見えるはず…! !

全身はこんな感じです↓

エソの仲間は小骨が多く、天ぷらや刺身にもできるようですが、すり身にされることが一般的で、エソを使ったかまぼこは高級品としても知られています。そのため名前は知っていてもみなさんが訪れる鮮魚店などではあまり全身を見ないかもしれませんね(水槽の中でもですが…)。

そんなマエソは、相模湾ゾーン 沿岸水槽に展示中です! 短期の展示になる可能性もありますので、お早めにお越しください!

最後に、みなさんが網を一生懸命絞っているなか、マエソを持って船の上をちょこまか動き回わせていただける漁師さんたちに感謝です! これからもよろしくお願いいたします。

相模湾ゾーン

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