2025年11月16日
トリーター:石川

ペンギンの巣材

今年も繁殖シーズンが始まり、雄も雌も繁殖行動に精を出しているようすをよく見かけるようになりました。

さてこの時期よくあるのが、「たわしがなくなった事件」。
金たわしとハンドブラシがいつもの掃除のアイテムなのですが、今そこに置いておいた金たわしがない! という現象がこの時期くらいからよく起こります。
昔は亀の子たわしを使っていたり、ナイロンたわしを使っていたりしましたが、これらも同様に消えてしまうのです。

もちろん犯人は一緒に掃除をしているメンバー・・ ではありません。
犯人(鳥)は「ペンギン」です。
特に、雄ペンギンが自分の縄張りや巣へ持っていってしまいます。
たいていこういうときは、思わず「こらっ! ○○○ たわし返せ!」みたいな会話がペンギン舎内に飛び交います。
ペンギンたちもわかっているのか、取られないようにプールへ持っていってしまうものもいます。 この場合は、怒るとプールでたわしを離してプール底に沈むということになり、拾うのも二度手間になります。

この行動はペンギンたちが巣を作るために集める、いわば “巣材” になります。
“えのすい” では今、巣材として人工芝を使っているので、巣材で巣を作らなくてよいようにしています。
ペンギンの生態的には 自分で集めた巣材で巣を作らせたいのですが、過去にいろいろなものを巣材として使用してみました。
小石、竹ぼうきを 30cmくらいに切ったもの、梱包用の緩衝材をネットに入れたもの、木のチップなどなど。 基本くわえられるものなら何でも集めるので、屋外で飼育をしていた頃は、飛んできたごみとかも集めてしまいました。

ペンギンに巣材を提供する前には、誤飲を警戒して飲み込めない大きさ、長さにこだわって与えるのですが、毎日強くかみついたり、足の爪でガリガリやったり、使っていくうちに折れたり、欠けたり、しぼんだりして誤飲しやすいものにしてしまうため、定期的に新しくしなければなりません。
本来は一度設置して子育てが終わるまでは、形状なども変えない方が望ましいわけで、人がいじって変えてしまう時点で、多様性を尊重できているかは疑問でした。
そんななか、他の施設で人工芝だけというところがあって、これは交換しても形状が変わらず、滑ってヒナが股関節を痛めたりせず、踏ん張り(爪を使って踏ん張る)も効いて、ヒナの肢の発育にもよく、乾燥させやすく衛生的で、誤飲による怪我や死亡事故がなく、今までの素材より掃除が楽という非常に良い材質でしたので、今では安定の巣材となっています。

ただ こうなると巣材を集める必要がないのですが、その行動は尊重させたいですし、こういった繁殖行動が個体ごとの繁殖意欲へとつながっていくので、卵が産卵されるまでは、8cm × 8cm くらいの大きさに切った人工芝を収集行動用にまいてみたりします。
それでも、金たわしは魅力的みたいです。

先日繁殖行動へは なかなか進めないお見合い1年以上目のフンボルトペンギン「テン」が、掃除の最中に大変申し訳なさそうに金たわしをくわえていたのです。

フンボルトペンギン「テン」フンボルトペンギン「テン」

これは繁殖行動につながるのではないかと、早速小さい人工芝をまいておくと、何となく自身がよく寝ているところあたりへ集めているのです。
小さな一歩・・ 大事です!
うんうん、良きかな!!

ペンギン・アザラシ

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