11月11日(ポッキーの日!)に今シーズン最初のフンボルトペンギンの産卵がありました。私たちはペンギンの行動を観察して産卵の気配を察知します。けれども「あ!もう産むな!」と思っても、予想が外れてそこから 1週間が経つこともしばしばあります。今回はどうだったかというと、私、産む気配を完璧に捉えました。
まず、メスは食欲が上がって体重も増えます。今回産卵した「ユメ」は、それはもう食べに食べて、平均 3,800 gの体重が 4,900 gまで増えました。続いて、体の準備が整うと縄張りに帰ろうとする意識が強くなります。「ユメ」はオスの「ホワイト」と一緒に 2階を縄張りにしています。ここは給餌のときと就寝時以外、階段を閉鎖していて、その間 2羽をプールで泳がせています。ところが「産みます!」という気持ちが強まると、階段の前で行ったり来たりし始めたり、朝も給餌後も 2階から動かなかったり、帰りたいんだなぁというのがよくわかる行動を見せます。安心・安全な縄張りに帰ろうとするのは自然なことです。産卵前はとくにその意識が強まります。そして、ごはんを食べなくなります。「ユメ」にとってはごはんどころではないのです。1日に 400 gの魚を食べていたのに、産卵 1週間前から 200 g、100 g、50 gと食べる量が減っていきました。こうなってくると、いよいよかと思い、私たちもそわそわしてきます(食べない日がさらに 1週間続いて予想が外れることもあります)。
ポッキーの日、とうとう「ユメ」は全く魚を食べませんでした。これは来るな、と思った私たちは、人工芝を敷いて産卵しやすい状況を整えます。そのときのようすがこちら。

「お前が準備するんかーい!」と思わずツッコんでしまった…
オスの「ホワイト」が産卵体制のような伏せをしていたのでつい…
すみません。これは 11月 6日の写真です。

ポッキーの日の夕方 5時の写真がこちら。
「ユメ」さん産卵体制に入りましたー!
これを見たとき、「来るぞ」と思いましたね。
なんか産みそうな雰囲気、わかります!?
警戒させないように一旦退室することにしました。
1時後… 産んでいました…
小形トリーターが全く食べない「ユメ」のために特別にごはんを持って行ったのが夕方 6時。そのときすでに産卵を終えていたそうです。

翌日、ちゃんと足元で支えながらお腹の下で温めています!
そして 11月 15日に 2つ目を産卵しました(フンボルトペンギンは通常 2個の卵を産みます)。その後は上手に温められているかどうか(抱卵といいます)を見守っていきます。

あら! オスの「ホワイト」も一緒になって抱卵ですか!?

違うんかーい! とちゃんとツッコんでおきました。

別の日はこちら。
おいおい! 1個忘れているよ! と声をかけたくなる瞬間でした。
担当者からは「まだまだやる気が感じられない」と言われています(笑)
巣を守っている時点でやる気は十分あるんですけどね!
というわけで、今シーズン最初の産卵エピソードをお届けしました。その後「チョキ」も産卵しました。さらにごはんを食べなくなって 1週間が経つ「マリー」もいます(長すぎ!)。産卵ラッシュ到来です。
ここからは有精卵か無精卵かを調べる必要がありますし、親がちゃんと抱卵できるかを観察しなければなりません。血縁関係も重要になってきます。もちろんすべての卵が孵化するわけではないのですが、とりあえずは、ごはんも食べずに大変だったであろう「ユメ」に、お疲れさまでした、と声を掛けてあげてください。