先日、フンボルトペンギンの「ウタ」と「キク」のペアが産卵をしました。
以前にもお伝えしましたが、2羽はペアですが、どちらもメスです。
“えのすい”では 30歳前後の高齢個体でメスのペアが 4ペアいます。
1羽を除いて、かつてはオスと番(つがい)になっていたメスですが、同い年くらいの番になっていないダンディなオス“イケオジ”もおらず、すでに番になっている若いオスとはちゃんと交尾しているのですが、若いメスから奪い取る気はないようで、そんな苦労をするくらいなら老後は気心知れた友だちと過ごした方が楽しいと思っているのか、高齢個体では同年代のメスとメスのペアが多いのが、“えのすい”のペンギン事情でもあります。
さてこのメスメスペアで産卵が始まるとちょっと厄介なことがあります。産卵の周期をしっかり合わせてくることが多いのです。
今回の「ウタ」と「キク」もばっちり合わせてきました。
2/28「キク」1卵目、
3/3「ウタ」1卵目、
3/4「キク」2卵目、
3/6「ウタ」2卵目 といった具合です。
「ウタ」は年を越す前に一度産卵期がきていて、今回は今期繁殖期の 2回目の産卵となります。「キク」は毎年この時期に 1回目の産卵を迎えるのですが、この違う周期をしっかり合わせてくるのです。
フンボルトペンギンは普通 1回に 2個卵を産みます。1卵目が割れてしまったり、採卵したりすると 3卵目を産むこともありますが、普通は 2個もしくは 1個です。この 1個目と 2個目の間隔は 3日から 4日空いて産卵します。通常オスとメスの番では、メスしか産卵しませんから、問題はありませんが、2羽のメスで同じタイミングで産卵するとどちらの卵かわからなくなってしまいます。
これを防ぐために、産卵の兆候が見えたら毎日 2羽の体重を朝の空腹時に計測します。たいていは産卵直前では摂餌が止まるため、産卵された卵の卵重以上元の体重より下がっていればほぼ間違いなくその個体と特定できます。卵の平均的卵重は 120g 前後です。
ところが、今回は「キク」が 1卵目を産卵し、翌日は摂餌 85g、翌々日に 165g 食べました。その次の日は 0gで翌朝卵を抱いていました。ここで「ウタ」が産卵し、朝「キク」が抱卵していたのです。もう、こうなってくると体重だけでは確定に至りません。
ここで登場するのが、定点カメラです。夜間対応機能がついています。しかし今回「ウタ」が産卵した際には、カメラへ向きながらの姿勢でしたのでそれらしき動きは見られましたが、産卵するところは見えません。また、産卵を待ち構えていたように「キク」がカメラへおしりを向けて「ウタ」にぴったりくっつきながら産んだ卵を腹の下へ抱きいれたようなのです。
限りなく「ウタ」が産卵した気配ではありますが、こうなると「キク」の2卵目と「ウタ」の2卵目の産卵をおさえないと確定ができません。
何かこちらの意図を理解したうえで、故意にわからないようにされているのではないかとまで感じてしまう行動です。これはある意味多様性のなせる業なのかもしれません。同じ時期に産卵した方が生存率が上がるという野性的な感覚のように感じます。
でももっとよく考えてほしい、一度に 4羽なんて育てたら雛へ餌が行き渡らず、雛が無事に育つ可能性は低いと思います。親への負担も相当かかります。オスメスで雛 2羽を育てるのでもかなりしんどそうなので、親の体力が消耗し死んでしまう可能性もあります。
また、もう少し若いころにこの 2羽に雛 1羽の子育てをさせたことがあるのですが、この 2羽はメスメスということ以上にとっても温厚な性格で、ほとんどけんかはしないんです。好戦的ではないところがあだとなって、営巣しているところを他の番になっているオスに占領されてしまったことがあります。
子育てと同時に縄張りも守り抜かなければ子育てもできなくなります。闘争で怪我をしてしまうのも心配です。それ以降このペアへは子育てはさせず、他の番へお願いして育ててもらうという形で子どもを残しています。今回も良き育ての親が見つかると良いのですが、2羽の気持ちがつながっていくように今後も見守りたいとも思います。

「ウタ」の卵を抱く「キク」