〔前回までのあらすじ〕
昨年 10月のこと。エチゼンクラゲ採集のため、石川県能登半島まで片道 10時間かけて行ったのにも関わらず、結局エチゼンクラゲに遭遇できなかった私。
はたして今年は無事にエチゼンクラゲを採集することができるのだろうか・・・。
朝 3:30、漁師さんの船に乗せてもらって出航。沖の定置網をめざしました。
エチゼンクラゲがたくさん定置網に入っていることを願いつつも、海の夜風は冷たく、これから暗い海に、しかもエチゼンクラゲがうじゃうじゃしている定置網のなかに飛び込むのかと思うと憂鬱な気分です。
エチゼンクラゲに刺され、唇がタラコのようになった足立さん(クラゲ担当者)の顔写真が脳裏に浮かびます。
しかし今年はなんとしてでもエチゼンクラゲを“えのすい”に持って帰り、繁殖させて、現在おこなっている研究を進めなければなりません。
そんなことを考えているうちに、船が定置網に着きました。水面をぱっと見たかんじでは、エチゼンクラゲが 1個体しかいません・・・。しかも大きすぎる!
傘の直径が 1mくらいあります。これでは大きすぎて持って帰ることはできません。また今年も・・・、と思ったそのとき、網の底の方からエチゼンクラゲが浮き上がってきました。
「今だ!飛び込め!!」
怖いとかそういうことを考えている余裕もなく、とにかく必死で網の中に飛び込み、元気なエチゼンクラゲを探します。
船上からは「そっちじゃない!こっちのクラゲだ!」という植田さんの声が聞こえてきますが、たくさんのクラゲに囲まれているため、どのクラゲのことを指しているのかよくわかりません。
エチゼンクラゲの捕獲は時間との戦いです。なぜなら漁師さんが作業をストップして、わざわざ私たちがクラゲを捕まえるのを待っていてくれるからです。
なんとか傘の直径が 5cmほどのクラゲを抱えて樽に入れ、船上から樽ごと引き上げてもらいます。
あまりに重いため、船に備え付けてあるクレーンで持ち上げます。
この日は結局 3個体採集することができました。採集が終わって船に引き上げてもらったとき、本当にほっとしました。
今年はエチゼンクラゲを採集できた!
次の日の朝、私たちが捕獲したエチゼンクラゲは拍動も弱々しく、結局ほとんど卵を出しませんでした。
私たちの今年の 1番の目標は、エチゼンクラゲの受精卵を得ることでしたが、今年も私は使命を果たせなかったのです・・・。
日本沿岸で漁業を営んでいる漁師さんはまさに、エチゼンクラゲと日々格闘していますが、エチゼンクラゲの研究者やそして私たちも、エチゼンクラゲの生態を解明すべく、日々努力をし続けています。
今度こそはきっとうまくいく!そう信じてエチゼンクラゲの研究を続けていきますので、みなさまの応援をよろしくお願いいたします。
樽に入れられたエチゼンクラゲ
定置網に入網したエチゼンクラゲ
定置網漁のようす
船上から見た朝日