きょうは調査航海2日目、天候は良し、海上はやや風はあって揺れるものの潜航は可能です。
朝早くから潜航調査の準備が始まっています。
6:00 潜航準備開始
7:00 朝食
7:30 ハイパードルフィン(HPD)の作業確認
8:00 作業前ミーティング
8:15 HPDの吊り上げ
8:20 着水
8:30 潜航開始
といったスケジュールでHPDは小笠原の海に消えていきました。
調査地点の水深は約 1,300mで、海底までは 1時間ちょっとの道のり。
海底までの間、HPDのコントロールルームのメインモニターを見ていると、思っていたよりも海中の懸濁物が多く、生き物ではクラゲの仲間に多く出くわしました。
その多くは、長細い姿の管クラゲ類のようでした。
そうこうするうちに予定時間より 10分遅れて、海底に着底です。
着底後、しばらくは泥と岩が続く荒涼とした海底が続き、極まれにイソギンチャクとソコダラの仲間が見えるだけでした。
50年ほどまで深海に生物は何も棲息していていないといわれていたのがよく分かるような気がしました。
その後、小さな山脈のようなチムニーが見えましたが、それは既に熱水が噴出していない「デッドチムニー」といわれる黒いチムニー群でした。
ん~、残念。
さらに進むと、白い海底がパッチ状に見え始め、さらにその奥には白く立ち並ぶ熱水の噴出するチムニー群を見ることができました。
熱水にはメタンや硫化水素などが含まれ、それらをエネルギー源とするバクテリアが熱水の噴出するチムニーにまとわりつくように白いマット状のコロニーを形成しているので、活動中のチムニーは白くなっています。
この白いバクテリアマットが調査の目印になります。
白いチムニーをアップで観察すると、熱水噴出口の周辺にはとても小さなウロコムシやゴカイの仲間、少し離れた上にチムニーにはフジツボの仲間にあたるネッスイハナカゴの1種が数多く付着しています。そして、周囲にはシチヨウシンカイのコロニーが形成され、コロニーの隙間には大小のユノハナガニがもぞもぞと動いていました。
先ほどの荒涼とした海底とは実に対照的です。
熱水噴出域の豊かさを感じました。
今回は、このチムニーに棲息している特に小さな生物たちの調査が目的です。
どのような種類の生物が棲息し、どのような生活をしているのかを調査します。
乗船している研究者の皆さんはHPDに搭載させた最新の機器を駆使して、それぞれの研究をおこなっています。
研究の内容によっては、潜航後直ぐに揺れる船内で実験をおこなわなくてはならない事は普通できょうも夜遅くまで、みなさん研究室にこもっています。
私も研究用の生物サンプルの管理の傍らで、乗船中は研究のお手伝いをしています。
きょうは特にトラブルもなく、潜航調査を無事終えることができて良かったです。
久しぶりに見る小笠原の海底は、とてもアクティブでした。
そして、自然の豊かさや凄さを改めて感じた調査でもありました。
さて、まだまだ船上での実験は続きます。
研究のお手伝いをしつつ、またあすからの調査や実験に備えたいと思います。
少々長くなってしまいましたが、本日の日誌はここまで。
あすも無事潜航できることを祈って。
では、またあした。
浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら
どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。
打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。
浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。
どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。
本調査は、「東京大学」が東京都から特別採捕の許可を得て行っているものです
JAMSTEC(海洋研究開発機構)KS-18-3 「伊豆諸島海域の海丘内熱水域生物群集の栄養生態と代謝の解明」を目的とした調査航海
新江ノ島水族館は、海洋研究開発機構(JAMSTEC)と深海生物の長期飼育技術の開発に関する共同研究を行っています