2019年07月24日

勢水丸 三重県沖生物採集航海(3)航海日誌 3日目/八巻

  • 期間:2019年7月22(月)~2019年7月26日(金)
  • 場所:三重県沖
  • 目的:ドレッジ、プランクトンネットによる生物の調査・採集
  • 担当:西川・八巻


きょうもよい天気、海上はすでに梅雨が明けたかのような夏の日差しがふりそそぎます。今回の勢水丸航海も早3日目、残る調査日は、きょう含めて2日間となりました。
きょうの航海日誌は、きのうまで担当していた西川に代わって、同乗中の八巻がお送りします。

私も5日間という長い航海は久しぶりですので、緊張半分、期待半分で不安の中、乗船しました。しかしそんな不安とは裏腹に、ここまでの調査は全て予定通りにできています。
船の調査は変わりやすい海の天候に左右されることが多く、予定されていた調査ができないこともしばしばですので、きっと乗船メンバーの日ごろのおこないがよい!?からに違いありません!
しかし、何がとれるかは運次第です。

きょうもきのうまでと同様に、午前午後ドレッジ2回、夜間プランクトンネット1回の採集をおこないました。
ドレッジは三重県熊野灘西方の尾鷲沖で、1回目が水深約 200m、2回目が水深約 800m。プランクトンネットは熊野灘東方の安乗口海底谷周辺の約 800mです。


取れた泥から生き物を探すため洗い出しをするようす

きのうまでのドレッジをおこなった海底は、大きな石がゴロゴロしている礫でしたが、きょうはうって変わって2回ともねっとりとしたの粘土質の泥でした。
砂などはさらさらでドレッジの網から抜けていくので、大きな生き物も拾いやすいのですが、泥は生き物が埋まってしまい、見つけにくいので洗い出し作業をおこないます。
そんな中からなんとか探し出したのが、こちら。
1回目に入っていた、「トゲヒゲガニ」と思われるカニです。
最初は全く動かずだめかと思いましたが、冷たい水に入れていたら完全復活しました。
おそらく無事持ち帰り、搬入できるかと思います。


トゲヒゲガニ

泥の中には小さな生き物がたくさんすんでいます。それを調査するのが、今回同乗させていただいている北里大学の先生方の研究です。
中でも「コケムシ」という生き物を研究されている先生に教えてもらった面白い生き物が、その名も「スナツブコケムシ」。
5mmほどで砂粒のように小さいのですが、本当の“砂粒”(写真左)と比べると、放射相称で生き物らしさがにじみ出ています。
ちなみにこちらはスナツブコケムシの「虫室(骨格のようなもの)」で、すでに死んでしまったものです。
生きていると、虫室に空いている穴の中からコケムシ本体の触手が出てくるそうです。


スナツブコケムシ(右)と砂粒(左)

泥をソーティング(詳しく見て目的の生き物を探すこと)していると、他にも有孔虫の殻や小さな巻貝、ゴカイ、小型甲殻類など、いろいろと面白い生き物が出てきます。
ビーチコーミングならぬディープシーコーミングですね!
水族館でもこのような小さな生き物の魅力を伝えられるようにしていきたいものです。
調査航海は、このように知らない生き物や知らない分野の研究者の方と出会うことができるのも大きな醍醐味の一つで、私たちトリーターの知識のすそ野を広げてくれます。

夜間のプランクトンネットでは、私自身、初めて見る生き物が採れました!
「コウモリダコ」という、タコとイカの中間のような原始的な頭足類です。
5cmほどのとても小さな個体でした。
残念ながら、すでにほかの生き物に揉まれて瀕死の状態でした。
きれいに掃除して写真を撮りましたが、取り切れないゴミがついてしまっていますね。
左に口があり、腕をひっくり返して外套膜の一部を覆っているような状態です。
ちょうど真ん中のあたりには赤い目がありますね。
外套膜にはメンダコのような“耳”が4つついていました。この“耳”を使って泳ぐコウモリダコの姿を見てみたいものですね。


コウモリダコ

さて、あすはいよいよ調査最終日。頑張っていきたいと思います!

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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