2020年01月19日

鹿児島湾及び周辺海域調査航海(5)航海日誌5日目

  • 期間:2020年1月15日(水)~1月22日(水)
  • 場所:鹿児島湾及び周辺海域
  • 目的:コノハエビはポンペイワームを超える? ~鹿児島熱水噴出域産コノハエビ類の高温耐性に関する研究
  • 担当:八巻


調査日2日目、チムニーそびえる熱水噴出域
航海5日目、調査日も2日目となりました。きょうも天気は晴れ、気持ちの良い朝です!
きょうはきのう調査した地点から少し離れたところを、主な調査海域にしています。
同じ鹿児島湾 湾奥の水深 200m海域ですが、きのうの海域は広範囲から熱水がじわじわ湧き出ていた熱水湧出域であったのに対して、きょうの海域は熱水噴出域と呼ばれ、熱水が噴き出す噴出孔があり、いわゆるチムニーが形成されています。
チムニーを形成する岩の隙間は、今回の調査の主目的としているタギリコノハエビの生息域にもなっており、これまでに何度も採取された実績があります。
潜航後しばらく海底を探すと、見えてきました!
4~ 5mはあろうかという見事なチムニーです。


私は同じ海域に来たことがありましたが、実際にチムニーを見たのは初めてです。
チムニーは熱水に含まれる金属などの成分が、海水中に噴出した際に急激な水温低下や水質の変化で固まってできたもので、少しずつ成長していきます。
ここまで大きくなるのにどれくらいかかかったのかなと考えてしまいます。
しかし一方で、きのうに引き続き生物の姿は全く見えません。
ハイパードルフィンの CTD(複数の水質項目をリアルタイムで計測できる観測機器)が示す DO(溶存酸素濃度)の値は 0.0ml/lで、かなり低い状態です。


ここまで低いと目に見える大きさの生物は呼吸ができず、すむことのできない環境になっているのかもしれません。
鹿児島湾の湾奥はとても閉鎖的で、北側から見ると湾の向こうに桜島が見え、桜島の東側の細い海峡でのみ湾央とつながっています(図1)。


図 1

湾奥部の海底には姶良カルデラという水深 140mほどのカルデラがあって、その中にさらに深い若尊(わかみこ)火口と呼ばれる水深 200mのくぼみがあり、そのくぼみの中に若尊海丘がある、というつくりです(図1)。

きのうときょうの調査海域は若尊火口にあります。
周りよりもくぼんでいるので、海水の鉛直混合が鈍くなる冬季は、水がよどんでまわりの海底よりもさらに DOが下がるようです。
今回採取してきたチムニー片をくまなく調べてみても、結局目的のタギリコノハエビを見つけることはできませんでした。
以前生物を確認したのは夏季だったこともあり、もしかしたら冬季は DOが極端に下がって、生物がいなくなるという季節変動をする海域なのかもしれません。
いつもそこに行けばいるというものではない、生物調査の難しさを改めて感じました。

貴重な機会ですので、採取してきたチムニー片を顕微鏡で観察してみました。
さまざまな鉱石を見ることができましたが、中でも輝安鉱(きあんこう)はとても美しく、感動しました!
この海域の熱水はいわゆるレアメタルの「アンチモン」を含んでおり、輝安鉱のかたちで結晶化するそうです。
初めてこの鉱石を見ましたが、繊維状にみえる結晶で、金属光沢が本当にきれいでした。



あすは若尊海丘の頂上(図1)にあるハオリムシサイトに潜航予定です!


JAMSTEC(海洋研究開発機構)KS-20-2 新青丸/ハイパードルフィン 「コノハエビはポンペイワームを超える? ~鹿児島熱水噴出域産コノハエビ類の高温耐性に関する研究」を目的とした調査航海

新江ノ島水族館は、JAMSTECと深海生物の長期飼育技術の開発に関する共同研究を行っています

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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