2024年05月01日

オーシャンショット航海 (3)
4月30日、5月1日 2つの水中ロボット始動!

  • 期間:2024年4月27日(土)~5月19日(日)
  • 場所:南大東島周辺海域、九州・パラオ海嶺
  • 目的:深海石灰岩洞窟における遺存種の把握とその分類学的研究
  • 担当:八巻


みなさんこんにちは!八巻です。
きょうで航海5日目となりました。

きのう 4月30日から、いよいよ南大東島近海の調査が始まっています。
きのうは今回乗船している「かいめい」に搭載されている「KM-ROV」で、本航海初の潜航調査を実施しました!
ROVとはケーブルを通して船上から操作を行う水中ロボットのことです。


KM-ROV

KM-ROV は最大で水深 3,000mまで潜航することができる水中ロボットですが、今回の潜航は、南大東島周辺の水深 800m~ 300m付近までの海底を観察するという目的です。
初潜行ということで、未知の海域にどのような海底地形が広がっているのか、どのような生物が棲んでいるのか、今後の調査の方向性を決めるためにも、まずは全体像を把握しようというものです。

いざ潜航!
乗船者全員が胸を躍らせながら潜航を見守りました。
ROV の良いところは、大人数で潜航を同時に見ることができるという点で、複数の研究者がみんなで一つの画面を見て、今どんな生き物が見えているか共有することができます。

KM-ROVからの映像をみんなで見守るKM-ROVからの映像をみんなで見守る


そしてついに水深約 800mで海底が見えました!


海底が見えた!

石灰岩の海底で、まさにサンゴ礁からできた大東島周辺の海の底、という感じです。
前日に確認した通りのとても急な斜面でした。ほとんど壁といってもよいくらいです。
早速見えた、とても足が細いイトアシエビの仲間。
耳のようなひれで泳ぐジュウモンジダコの仲間。
早速不思議な生き物に出迎えてもらうことができました。


イトアシエビ


ジュウモンジダコ


しばらくすすむと、洞窟らしき海底地形も発見です!
今回は深海の洞窟にすむ生き物を探るということが一つの大きな目的ですから、期待は膨らむばかりです!


洞窟のような海底地形


随所でいろいろな魚も観察できました。


ヒシダイ


アデウツボ


ハチジョウアカムツ


他にも目立った生き物は、ウデボソヒトデです。
とにかくたくさんいました。
江の島沖でも見たことがありますが、こんなに群れているようすは見たことがありません!
ついでに江の島沖のイツメン、アズマハナダイもいましたが、とても大きな個体でした。
ウデボソヒトデがトリノアシに変わったら、江の島沖とよくにているかも?!

ウデボソヒトデの群れるようすとアズマハナダイウデボソヒトデの群れるようすとアズマハナダイ

朝8時に始まった潜航も、気がつけばもう夕方4時、浮上予定時刻になってしまいました。
観察をしつつ、サンプリングできるものはスラープガンという水中掃除機を中心に採集を実施、揚収となりました。

揚収後は乗船研究者の方々が各サンプルをとりわけ、同定をしたり、いろいろな実験をおこないます。


KM-ROVからサンプルを回収する研究者の方


実験をおこなう研究者の方

初潜航の日は、それぞれサンプルの処理やあすの準備をおこない、夜が更けていきました。


そして本日 5月1日、きょうは2台目の水中ロボット、「クラムボン」が登場しました!

クラムボンクラムボン

クラムボンは KM-ROV よりはかなり小型の水中ロボットですが、当館で使っている水中ドローンをみなれていると、とても大きく見えます!
クラムボンでは、KM-ROV では浅すぎて潜ることのできない 300m以浅を見るということを第一の目的としています。
クラムボンの1潜航目、最初にやや深めのところに潜り、そこから深度を上げていこうという作戦でした。
しかし、深く潜っていくと途中から映像が乱れるようになってしまい、揚収を余儀なくされました。どうやら光ケーブルに不調があったようで、そこを改善して再度潜航です!

航海でトラブルはつきものです。どうしてもトラブルは起きるし、トラブルを完全に避けることはできません。予備を用意しておくことやトラブルがあったときにどう対処するかを考えておくことなど、トラブルに事前に備えるというリスクマネージメントは、航海においてはもちろん、日常生活でも大切なことだなと、航海のたびに思い知らされます。

2潜航目で無事水深 600mほどの海底に着底、観察を開始しました。
海底はまるで雪山のような景色でした。


クラムボンからの映像をみんなで見守る

雪山のような海底雪山のような海底

全体的にきのうより生き物が少ないように思えまいたが、随所で生物を観察することができました。


ウミシダの仲間

サンゴイワシサンゴイワシ

潜航の時間が2時間ほどということで、あまり時間がない中ではありましたが、生物の観察およびサンプルの採集を有意義におこなうことができました!
今回のサンプルは砂です。
砂の中にはいろいろな小さな生き物が隠れていて、研究者の方々は顕微鏡を使って小さな生き物を探します。
ヘイケガニの仲間も出てきました。


顕微鏡をのぞく研究者の方々

ヘイケガニの仲間ヘイケガニの仲間

きょうは晴れて、とてもきれいな夕焼けを見ることができました!
航海は普段見ることができない特別な景色をみることができるのも、また楽しくうれしいところです。


・公益財団法人 笹川平和財団海洋政策研究所「オーシャンショット研究助成」
JAMSTEC(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)KM24-03「かいめい」/「KM-ROV」 オーシャンショット航海
・新江ノ島水族館は、JAMSTECと深海生物の長期飼育技術の開発に関する共同研究をおこなっています。

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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