2024年05月15日

D-ARK 航海 (10)
5月14日、5月15日 九州パラオ海嶺 水深 2,000m域、光るサメ

  • 期間:2024年4月27日(土)~5月19日(日)
  • 場所:南大東島周辺海域、九州・パラオ海嶺
  • 目的:深海石灰岩洞窟における遺存種の把握とその分類学的研究
  • 担当:八巻


みなさんこんにちは! 八巻です。

九州パラオ海嶺北高鵬海山の調査も3日目、4日目となります。

3日目の 5月 14日は平頂部の水深 300m域を、クラムボンとベイトカメラで再び調査し、4日目の本日 5月 15日は、大東島から通して初となる深い深度への潜航です。
目指すは水深 2,000m域!

以前 2020年に海山で調査をおこなった際も、比較的浅い山頂付近と、ふもとに近い 2,000m付近の両方を観察していますので、今回もそれに倣っています。

基本的にこれまでの観察でも、浅い山頂付近は賑やかで生物量が多く、深いふもと付近は生物量が低いという傾向がみられています。
しかし、深い海底にはその深度に特化した、いかにも深海生物!という生き物たちを見ることができるので、とても楽しみです。

海底までの距離が長いと潜航する時間も長く、海底に着くまで1時間近くかかります。
わくわくしながら待っていると、ようやく海底が見えてきました!
ひっそりと静まり返り、海流で自然と形作られた模様が広がる海底は、えもいわれぬ美しさがあります。
少し進むと、ぬらりと泳いでくるアシロ科の一種。バケアシロでしょうか。早速深海感満載です。

水深 約 2,000mを泳ぐアシロ科の一種水深 約 2,000mを泳ぐアシロ科の一種

ここで、今回は最初に採泥をすることになりました。
泥を採ってどうするの?と思いますが、海底に積もる泥や砂の中には、たとえ深海でも、数mmの大きさの多数の小さな生き物たちがくらしているのです。
今回もゴカイ類やヒモムシ類、小型甲殻類を専門とする研究者の方々が乗船されていますので、顕微鏡を使って採取した泥の中から生物を探し出す作業をおこないます。
このような深海底の場合、一すくいの泥でも、未記載種が含まれている可能性も高く、ただの泥と思うなかれ、宝の山ともいえるのです。


専用の容器で泥を採取するようす

その後も点々とさまざまな深海生物が確認できました。


透明なナマコ類


ひょろひょろと泳ぐトカゲギス類

ガラスカイメン類ガラスカイメン類


そして、実は期待していたこの魚!!いました!!
以前の 2020年の航海ではオオイトヒキイワシを確認しましたが、今回はイトヒキイワシと思われる魚を見ることができました!! とはいえ、ちょっと黒っぽく見えたり、ただのイトヒキイワシではないかもしれませんが、イトヒキイワシの仲間であることは間違いないと思います。
本当に美しい生き物ですよね。
とても繊細な糸状の胸鰭の広がりには感動さえ覚えます。
今回も以前オオイトヒキイワシの発見を一緒に喜んだ魚類分類学者の方と、この魚の仲間であるナガヅエエソを会社のロゴマークにされている FullDepth の技術者の方と大興奮で観察しました 笑

胸鰭を広げるイトヒキイワシ属の一種胸鰭を広げるイトヒキイワシ属の一種


さて、その後も多くの憧れの深海生物たちを観察できました。
ムーランルージュはとても美しく見てみたかったウミユリ類です。
どの生物も遠巻きだとあまり分かりませんが、とてもサイズが大きいです。


大きなマクヒトデ類


ムーランルージュとカイロウドウケツの仲間


八放サンゴ類

八放サンゴ類八放サンゴ類

サンプリングを重ねて進み、斜面が見えてきたころ、残念ながら離底時刻となってしまい、本日の潜航は終了となりました。

溶岩質の斜面溶岩質の斜面


さて、この海域に来ての釣獲調査ではこれまで釣れなかった魚が釣れています。
中でもナガタチカマスとヒレナガユメタチは、銅色と虹色に輝くぎらぎらとした体表が、本当にきれいな魚でした!


銅色に輝くナガタチカマス


虹色に輝くヒレナガユメタチ


そんな中、カラスザメという真っ黒なサメが釣れました。
実はこのサメ、光るサメということが知られています。一度は見てみたいと思っていたカラスザメが光る姿ですが、肉眼では見えない極めて微弱な光のため、観察は困難を極め、もちろん私自身見たことはありませんでした。
今回乗船されている研究者の方々の中に、光る生き物を専門とされている研究者の方もいらっしゃり、その方と一緒に高感度カメラで撮影してみると、おなか側が青く光る姿を初めて見ることができました!!!
カラスザメの仲間はおなか側だけが光ることが知られており、下から見られたときに自分の影を消すことができると考えられている能力で、これはカウンターイルミネーションと呼ばれます。
ずっと見てみたかった姿だけに本当に感動しました!!


釣獲調査で釣れたカラスザメ

高感度カメラで撮影すると、カラスザメのお腹側が青白く光る高感度カメラで撮影すると、カラスザメのお腹側が青白く光る


調査も残すところあと2日!
もう少し頑張ります!



本プロジェクトはオーシャンショット研究助成事業の助成を受けたものである。
※オーシャンショット研究助成事業は日本財団の助成を受けて笹川平和財団海洋政策研究所によって実施されている。

・JAMSTEC(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)KM24-03「かいめい」/「KM-ROV」 D-ARK 航海
・新江ノ島水族館は、JAMSTECと深海生物の長期飼育技術の開発に関する共同研究をおこなっています。

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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