2024年07月06日

水中ドローンによる相模湾の調査

  • 期間:2024年7月6日(土)
  • 場所:相模湾江の島沖片瀬海底谷 水深 111~253m
  • 目的:水中ドローンによる相模湾の調査
  • 担当:杉村

天候: 薄曇りから快晴
波 : 1~2m、海上の風:南南西1~6m
調査回数: 第 21回目(84~90dive)
Dive N0.: DU24-06~12(7潜航)


本日の調査は、現在の“えのすい”の主な調査海域の江の島沖にある片瀬海底谷の水深111~253mです。

まずは、水深 150m付近を目指して潜航を開始しました。
しかし、水深 210mまで潜航しても海底が見えず、水中ドローンとコントロールPCを繋ぐ 300mの通信ケーブルがかなり出ていってしまったので、やむなく潜航を中止して浮上しました。
船は魚類探知機で確認して 120m付近にいましたが、どうやら潮目にいたこともあり、表層と底層では流れの向きが逆になっていたようでした。
海面を見ると波の立ち方が違う場所があり、その場所へドローンが入って行ってしまったことが考えられます。
水中ドローンの調査で難しい所は、海中のことは実際にドローンで行ってみないと分からない点ですね。
船長と相談して、潮目から離れた場所へ移動し、気を取り直して改めて潜航を開始しました。
片瀬海底谷はこれまでの調査で、緩やかな傾斜の泥地と小さな崖上になった岩場が、間隔は異なりますが、階段状になっていることが分かっています。
午前中の調査は、110~120mの比較的浅めの棚になっている場所です。

最初に 120m付近の砂泥場で顔を見せてくれたのは、ダイナンウミヘビ。
これまでの調査では初めての観察です。

ダイナンウミヘビは、ダイビングで観察できる水深から 500m付近まで生息しているとされていますが、今回の調査で相模湾では少なくとも 120mまでは、生息していることが分かりました。
このようなことが実際の調査によって、証明されていくわけです。
海底は流れが早く、ウミトサカの仲間が海底に埋まった基質に付着していましたが、そこから横倒しに折れ曲がるように流されないように耐えていました。
ドローンも流れに負けないように操作するのが大変なほどでした。
場所を少し移して再び潜航していくと、100m付近で水面を見ようとカメラを上に向けると魚の姿が!! 
しばらく潜航するドローンについて来ていたので、種類を見ようとライトをつけるとびっくりしてどこかへ去っていってしまいました。
魚種は分かりませんでしたが、水深 100mでも魚の姿(影)が見えるんですね。
ちょっと捕食者になったような気分でした。

138mの砂泥底に着底して徐々に水深を上げながら調査を始めました。
133m付近にはユメカサゴ、オキトラギスがまばらに観察され、海底に埋まって突き出た岩が見えると、その岩影にはアズマハナダイがいつものように観察されました。
この光景が見え始めると、大きな岩が突き出た小さな崖に出ました。
このような場所は潮通しが良く、マリンスノーなどの懸濁物が捕まえやすいためでしょう、トリノアシが点在していて、この潜航では、トリノアシを採集して浮上しました。
トリノアシは、水族館の深海Ⅱの水中ドローン調査水槽で公開中です。

公開とあわせて長期飼育に挑戦しています。

午前中の最後の潜航では、砂泥底に、トラギスの仲間、フクロウニの仲間、ウミエラの仲間、ハナギンチャクの仲間と思われるイソギンチャク、岩場ではトリノアシや形の変わったカイメンの仲間が観察されました。

午後からは 150~250mの深場の調査を開始しました。
ドローンが 180m付近の岩場に着底すると PC画面いっぱいのエビが目に飛び込んできました。
それはオキノスジエビでした。
しかも岩の壁から、上に至るまでドローンの視界一面に。
岩陰一面の貼り付いたオキノスジエビを観察していると、そのほとんどのお腹が青くなっていることに気づきました。
放卵したメスたちです。
彼らの生活の一端を自分の目で見て確認できるのも海洋調査の醍醐味ですね。
その後、移動開始すると直ぐにフトツノザメでしょうか、正面から現れてドローンにびっくりして反転して去っていきました。

163m付近では、単独で遊泳するサギフエの仲間に遭遇しました。
これまでの調査で何度かサギフエの仲間には遭遇していますが、いずれも単独での発見でした。
“えのすい”の水槽でもそうですが、サギフエというと群れで飼育展示されています。
我々は、底曳漁などで採集しますが、ひと網で比較的多くのサギフエが採集されますし、水槽内でもあまり速く泳げるという印象は受けないので厳しい自然界では群れで生活していると考えてしまいます。
場所や水深によっても違うこともあるのかもしれません、彼らの生活様式もさまざまなのでしょうか。
この水中ドローンで観察されたサギフエのようすが、新たな生態の発見につながるかも知れません。
今後も範囲を広げて、調べていきたいと思います。

水深 250mの海底は泥底で、辺り一面にクモヒトデの仲間が泥底から腕だけを目一杯外に伸ばしていました。   
カイメンやウミトサカの仲間が広く点在していた他は、フサカサゴの仲間や岩の穴の中にはクロアナゴが、そして水深 156m付近でドローンの前を横切るツノザメの仲間には遭遇しました。

水深 150m~300mという場所は、深海の入り口であるにもかかわらず、人が潜るには深く、ROVを潜航させるには浅い場所です。
そういう意味では、実は調査があまり進んでいない場所です。
私たちは、水中ドローンの調査をおこなうことで、実はよく分かっていない身近な海の実態を明らかにしていきたいと思います。
そして、トリーターとして書物でしか得られなかった情報を自分の眼で確認するとともに、いろいろな発見をしていきたいと思います。

“えのすい”では、水中ドローンの調査を続けていきます。

深海Ⅱ-しんかい2000-

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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