樹上性イワガニ類の木登り展示
-飼育下におけるイワガニ類の定位場所の選択性-

2008年11月
日本甲殻類学会 第46回大会(ポスター発表)
伊藤 寿茂



樹上性イワガニ類の木登り展示
-飼育下におけるイワガニ類の定位場所の選択性-

伊藤 寿茂
新江ノ島水族館

要旨
マングローブ域に生息するカニ類は水中から樹上まで様々な場所にすみ分けている。中でもヒルギ類の樹上で生活する種類は,海産起源の生物でありながら樹上にいるという特異な性質,童話「猿蟹合戦」を連想させることなどから,展示,啓発価値の高い生物でもある。しかし,樹上を生活場所として選ぶ基準や,頻度,生存に必須であるかどうかなどその生態に関しての詳細は不明な点が多い。
また,生物の行動(生態)展示を行なう場合,自然下と飼育下とで異なる行動を示すケースが往々にしてある。空気中での立体活動が巧みなイワガニ類については,物陰に隠れたままになる,共食いが頻繁に起こる,水槽をよじ登って脱走するといった想定外の行動が多々あり,その樹上での行動を分かり易く展示するためには,フィールドにおける生態の調査に加えて,飼育下における行動パターンを把握する必要があり,展示飼育に適した種類を見出しておく必要がある。
この度演者は,マングローブ樹上に依存して生活するカニ類を含む半水棲甲殻類について,水槽内における定位場所を記録し,それらの行動について若干の知見を得たので報告する。

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