“川魚のジャンプ水槽”における行動展示について

2008年11月
第53回 日本動物園水族館協会 水族館技術者研究会
今井 啓吾 ・ 北田 貢 ・ 伊藤 寿茂



“川魚のジャンプ水槽”における行動展示について

○今井 啓吾 ・ 北田 貢 ・ 伊藤 寿茂

要旨
河川に生息する魚類は,回遊の他にも,水温や水位,流速などの微妙な変化を察知し,生活場所の移動を繰り返すが,この時に水面から跳躍したり,水飛沫を上げ疾走したりする特有の行動がみられる.
川魚のジャンプ水槽では,水面上から観察される川魚の遡上行動に重点をおき再現することを試みた.
大きさは開口面500×80cm,奥行111~180cmで,遡上を頻繁に行わせるために,10~50cmの水位変動を繰り返す仕組みとなっている.
高水位では,山間渓流を模した景観が半分ほど水没し,魚たちは広域が移動可能となり,おもに水深のある観覧側ガラス面に沿って群泳する.
低水位では,ほぼ全景が水面上に露出し,6地点に滝が出現すると,下流側の浅瀬に移動していた魚たちは,上流からの水流に導かれて滝を遡上する.
開館中は毎時1回の水位変動を設けて,再び高水位になると,上流側に移動していた魚たちは,通常の遊泳にて深みへと戻る.
水温22~24℃,滝の流速62~104cm/sec,照明11~13時間の範囲内で,展示魚種として,相模川に生息するコイ科のコイ,オイカワ,ウグイ,アブラハヤ,キュウリウオ科のアユ,ハゼ科のボウズハゼなどを用い,合計250尾ほどを混泳させたところ,1サイクル間で延べ150回以上の遡上を毎回確認できた.
自然では,季節変化や成長段階によって,川魚の遡上条件が常時存在するとは限らないが,本事例においては,水温や流速の調節,照明時間の操作を行い,魚種や魚体長の組み合わせを調整することで,通年にわたる遡上行動が演示可能となった.
また,学習プログラムに利用することで,河川に関した環境教育の一旦を担う事にもなった.

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