江の島における潮間帯イガイ科二枚貝類の生息状況

2008年11月
第53回 日本動物園水族館協会 水族館技術者研究会
植田 育男 ・ 萩原 清司



江の島における潮間帯イガイ科二枚貝類の生息状況

○植田 育男(1), 萩原 清司(2)
 (1) 新江ノ島水族館
 (2) 横須賀市自然・人文博物館

要旨
相模湾内に位置する江の島では,2007年に行われた潮間帯動物相調査で,9種のイガイ科二枚貝が記録された.これら9種の生息に関する種特異性を把握するため,イガイ科所属種に対象を絞った島内生息状況調査を行った.
2008年4月21日-6月16日のうち大潮前後の5日を調査日とし,最干潮時刻前後各2時間を調査時間に当て,調査地点は島内外周約5km全域に亘り39地点を設定した.
各地点では潮間帯を上位,中位,下位に概分し,各位2名にて5-10分間探索し,イガイ科所属種が見つかった場合には,種別,100cm2あたり1個体,2-9個体,10個体以上の3段階で生息密度,自然・人工別海岸形態,および波当たりを弱・中・強3 段階で区分し,ほぼ1地点置きに塩分を0.5‰精度で測定した.
出現種と出現地点数(括弧内数字)は,クログチ(21) ,イシマテ(20),ムラサキイガイ(13),ミドリイガイ(10),ムラサキインコ(10),コウロエンカワヒバリガイ(6),ホトトギスガイ(6),クジャクガイ(2)の8種で,2007年調査時に出現したヒバリガイは検出されなかった.最も広域に分布し上位限定生息のクログチ,最も狭域に分布し33-35‰の純海水地点で下位限定生息のクジャクガイ,純海水地点にほぼ限定生息のムラサキインコ・イシマテ,13.5-22‰の汽水地点に限定生息のホトトギスガイ・コウロエンカワヒバリガイ・ミドリイガイ,純海水-汽水地点に出現するものの波当たりが弱-中の地点に生息するムラサキイガイの各生息傾向が示唆された.
これらの結果から,江の島の汽水域周辺には外来種もしくは日本から海外に移出実績のある逆外来種が多く生息し,クログチは潮間帯の上位に限定して生息することにより空ニッチを利用し江の島の広域に分布すると考えられた.

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