2008年11月
第53回 日本動物園水族館協会 水族館技術者研究会
伊藤 寿茂 ・ 神応 義夫
飼育下におけるゴンズイの掃除行動
伊藤寿茂 ・ 神応義夫
新江ノ島水族館
要旨
他の生物の外部寄生虫などを食べる習性である掃除行動は,ホンソメワケベラやオトヒメエビなどがよく知られている.ゴンズイも掃除行動が確認されている種であるが,その行動習性についての記録は少ない.演者らは,水槽内で本種の頻繁な掃除行動を観察したので報告する.
調査は相模湾大水槽(水量約1000m3,搬入魚種110種以上)に導入された約1100個体のゴンズイ(標準体長:2~15cm)を対象とし,潜水による目視調査に拠った.
潜水調査は2007年10月23日から2008年5月8日の期間に計68回以上実施した.
水槽内を一定のルートで進み,本種の確認場所,群れの規模とそれをなす個体の体長組成,掃除対象魚種,掃除行動のパターンなどを記録した.
また,水槽に携わる職員を対象にアンケートを実施し,作業中に見られた本種の行動を記録した.
調査の結果,ゴンズイの行動について172例の観察がなされた.
本種の掃除行動はやや暗い擬岩下や側面が多かったが,明るい水槽中央部や中層部分でも見られた.
掃除行動は幼魚から成魚まで確認された.
掃除行動は,大型で定位性の強いクエ(36回)やツバクロエイ(16回),ウツボ(14回)などを中心とした27種に対して確認され,その中にはホンソメワケベラでは掃除行動がほとんど見られなかった軟骨魚類やミノカサゴも含まれた.
一方で,回遊性の高いアジ類やイワシ類などに対しては確認されなかった.
掃除行動のパターンは,静止している魚をゴンズイの群れが取り囲んで掃除するパターンが多かったが,魚種によっては鰭の動きを止めたり,鰓蓋や口を大きく開くなど,積極的に掃除を受け入れた.
以上のことから,本種が掃除魚として,他種との間に密接な共生関係を持ちうることが確かめられた.





