2012年12月
第57回 水族館技術者研究会(日本動物園水族館協会)
北嶋 円 他
江の島の潮間帯動物相調査
北嶋 円(1), 植田 育男(1), 萩原 清司(2), 伊藤 寿茂(1),
村石 健一(2)
(1) 新江ノ島水族館
(2) 横須賀市自然・人文博物館
要旨
新江ノ島水族館では,相模湾奥部に位置する江の島における潮間帯の動物相調査を,旧江の島水族館時代の1987年より5年おきに行なってきた.本調査は,出現する動物によって江の島における海岸環境の実態を把握するとともに,継続して調査を行うことによって,海岸環境の変化を追跡することを主な目的としている.2012 年は調査年に当り,過去5 回と同様の調査を行ったので,報告する.
調査日は,2012年4月11日~5月21日の大潮にあたる4日間で,最干潮前後の時間帯に実施した.環境の異なる6地点において,気温,接岸水温,塩分,pH,CODを測定した後,潮間帯部分を潮位高で上,中,下の3区分に概分し,区分毎に,肉眼で確認できる無脊椎動物について記録した.
また,タイドプールがある地点では,その中で確認された動物も記録した.個体数の多寡は,100cm
2相当の簡易方形枠内の個体数が,1個体,2個体以上10個体未満,10個体以上の3段階に分けて記録した.
調査の結果,11門178種の動物が確認され,2002年の196種,2007年の183種に及ばないものの,1987年の83種,1992年の120種,1997年の157種よりも多かった.そのうち初出現種は,ホシゾラホンヤドカリ,タカノケフサイソガニ,チョウセンハマグリなど34種であった.外来種は初記録のカニヤドリカンザシを含む9種が見られた.一方で,これまで多数観察されていたムラサキイガイやイワガニの確認数が著しく減少した.また,前回より遡って連続3回以上見られたが,今回確認できなかった種は,マナマコ,マルコツブムシ,アカニシ,スゴカイなど12種であった.確
認された種の変化の要因として,本土と繋がる砂州の拡大や,同定の整理により見つかった隠蔽種,人為的攪乱による影響などが考えられた.





