こんにちは、えのすいトリーターの西川です。
今回ご紹介するのは、テマリイソギンチャクです。名前の通り、丸くころんとした毬のような姿が特徴で、触手を体の内側にキュッと縮めることで、まるで手毬のような見た目になります。普段は岩やくぼみに張り付いてじっとしていて、刺激を受けると一瞬で体を丸めてしまうので、動く瞬間を見られたらかなり幸運です。
テマリイソギンチャクの展示このテマリイソギンチャク、熊野灘の水深 300~450 m から採集してきました。一度に 1,000個体以上採集されたのと、日本各地で見られていることから、深海にたくさん生息している普通種なのだと思います。採集した場所の底質は泥で、引き上げた際には彼らと一緒に大量の泥もついてきて、まさに泥まみれの状態。採集した個体も、この泥をとても大事そうに抱え込んでいました。
実はこの「泥を掴む」という行動、テマリイソギンチャクが属する Actinauge属の特徴のひとつなのだそうです。ところが、水槽で飼育していると、泥よりもアクリルガラスや岩など、固いものを選んで張り付くようすが見られるので、貝殻のような固いものが落ちていれば、そちらにくっつく方が好きなのかもしれません。
石にくっつくようすしばらくはバックヤードで、摂餌や動きのようすを観察していました。イソギンチャクは環境の変化に敏感な種も多いですが、テマリイソギンチャクは変化にかなり強そうで、バックヤード水槽に移動したときも、すぐに触手をお花のように開いてくれました。透き通った触手が動くようすはとてもきれいです。
バックヤード水槽での状態が安定してきたので、深海Ⅰで展示をスタートしています。普段は触手を広げてじっとしている姿が見られますが、同居している魚たちに触られると、ぎゅっと丸まって本当に「手毬」のようになっていることもあります。この「開いているとき」と「丸まっているとき」の見た目の違いこそが、テマリイソギンチャクの一番の魅力だと思うので、来館されたら少し時間をかけて観察してみてください。じっと待っていると、ふわっと触手を広げていく瞬間に出会えるかもしれません。
深海の生き物というと、地味で目立たないと思われがちですが、テマリイソギンチャクの透き通った体や動きは、じっくり見ると本当に見応えがあります。ぜひ足を止めて、彼らのペースでゆっくり過ごす姿を見ていってくださいね!