みなさん こんにちは!
すっかり湿気を感じなくなり、一年でいちばん好きな時期かもしれません。
大好きな金木犀の香りもしてきて、うれしいです!
私の担当している水槽は、相模湾ゾーンの海岸水槽の干潟と、岩礁水槽です。
いつも「干潟の葦が〜」と干潟の話ばかりしているような気がするので、今回は岩礁水槽についてです。
岩礁水槽はカジメという海藻が展示のメインです。
このカジメは水産試験場などでは養殖されているので、えのすいでも増やせるようにしよう! というのが今年の私のミッションです。
すごく簡単にカジメの増やし方についてお話します。
カジメは水温が上がってから下がる頃(ちょうど今頃ですね)、子嚢斑という種が詰まった盛り上がりができます。
その子嚢斑から遊走子という自分で動くことのできる種が出てきます。
これらがいい感じのところにぴたっとくっつき、オスの苗とメスの苗に成長していきます。
この苗のことは配偶体、といいます。
そしてオスの配偶体とメスの配偶体が受精すると、いわゆるカジメのミニチュアバージョンのような小さなカジメの赤ちゃんが育つというわけです!
オスの配偶体とメスの配偶体は受精しなければ、長期間保存することができます(フリー配偶体)。
このフリー配偶体を作り出すのが目標です。
8月の末ごろ、岩礁水槽内で子嚢斑(種の入った盛り上がり)ができているのを見つけたので、切り取って遊走子(動く種)をシャーレに入れました。
(培養液の濃度作成とか、遊走子の入れる割合とかいろんな手順がありますが、割愛します。)
1週間ほどして顕微鏡をのぞくと‥
配偶体1週間20μmくらいの配偶体(苗)に成長しています!
12日目になると‥
配偶体 12日目大きな枝分かれがメス、細かくもしゃもしゃしているのがオスです。
これがオスとメスかぁ! 分けるのなんて簡単そう! と思ったのもつかの間‥
これ、オスメス分けるのにすごく苦労しました。
こんなにはっきりオスメス分かるのに、なんでオスメスを分けるのに苦労したの? って感じですよね。
オスとメスははっきり分かるのですが、シャーレにくっついて剥がれないのです‥!
論文を読んで、論文のとおりにパスツールピペットというガラス製ピペットの先端を熱して糸のように伸ばし、細くしました。
正直、ピペットを作成した時はこんな細いピペットで吸えるのか‥? と思いました。
やってみると、ピペットが細い以前の問題で先端が鋭すぎて、プラスチックシャーレの底をガリガリ削ってしまいます。
シャーレにくっついている配偶体をとろうとすると、そのままぶちゅっとつぶしてしまいます‥。
配偶体、2時間格闘して1匹もとれませんでした。
暗雲立ち込める‥!
これはもう無理だから、限界希釈法という配偶体をすりつぶした液を希釈して、96個の小さな穴のあいているプレートにいれる方法しかないのか‥ と思いつつ、前年度カジメの配偶体を育てていたNトリーターに、「もう小さすぎてピペットで分けるのなんて無理だよー」と配偶体のシャーレを見せると「マイクロピペットならいけませんか?」と。
マイクロピペットなんて、パスツールピペットより太いんだから無理なのでは? と思いながら(失礼)、一緒にやってみるとなんと! マイクロピペットは確かに太いですが、工業製品のため、先端が滑らかでシャーレを傷つけず配偶体だけをつついてシャーレからはがせるではないですか!
試していないのに、マイクロピペットは無理だと決めつけてはいけないですね。
Nトリーターに大感謝です!
でもやっぱり魚類用のマイクロピペットでは太すぎるので、獣医師に細いマイクロピペットを借りました。
細いマイクロピペットでやってみると、とれるとれる!
狙った配偶体をシャーレからそっと剥がして、すっと吸うことができます!
吸った配偶体はオスとメスごとに混ざらないように違うプレート(24個の穴があいているような容器)に移していきます。
24穴プレート24個の穴、1つに1個体の配偶体です。
慣れてくると 20分ほどで 24個の穴のプレート全てに配偶体を分けることができました。
なんだか職人になったみたいで楽しいです。
ここからは 24個の穴に培養液を入れて、照明を当てておくと2か月後には 0.5mmに成長するそうです。
今は週に1回は写真を撮るようにしていて、27日目はこんな感じ‥
配偶体オス
配偶体メス少しずつ大きくなってきました!
といっても、目視できないくらい‥ 見えても埃のような大きさです。
2か月経ったらフラスコに移して、エアーをぶくぶくして晴れてフリー配偶体の完成です!
しばらくは観察の日々が続きますが、無事に配偶体が大きくなりますように‥!!