2025年04月07日
トリーター:大内

えのすい20周年 ~生き物たちへの感謝~
ゴンドウが教えてくれました

いよいよ、えのすい20周年も終盤です。私が感謝を伝えたいのは、えのすいゴンドウ’Sです。あっ、えのすいゴンドウ’Sは勝手にネーミングしました。ハナゴンドウの「ビーナ」と亡くなったオキゴンドウの「セーラー」です。

ハナゴンドウ「ビーナ」ハナゴンドウ「ビーナ」

私がえのすいに入社したての2004年 4月、もともと魚類のことしか知らなかった私は海獣類に配属されました。そこで、真っ先に私の相手をしてくれたのが「ビーナ」です。その当時、歩んできた人生のなかで鯨類に全く関心のなかった私が、はじめて対峙した鯨類でした。まさに未知との遭遇。
はじめは物珍しがって私の相手をしてくれていた「ビーナ」ですが、日に日に私の前からおでかけする時間が長くなり、1週間もすると頻繁に遊びに出かけていくようになりました。当時、イルカやクジラたちが自分の前にいるのが当たり前と思い込んでいましたが、本当は目の前にいてくれたんです。このことで私は、「生き物には上も下もなく対等」ということに気が付くきっかけとなりました。
今思い返すと当時の私は「ビーナ」からすれば、ぜんぜん面白くないやつでした。「ビーナ」のことは考えずに自分主導で「ビーナ」に付き合ってもらっていた、ということに気付いていなかったんです。そりゃ、相手の気持ちをくまないで、一方的に遊んでいても楽しいわけないですよね。今思い返すと、単なる自己中でした。

オキゴンドウ「セーラー」オキゴンドウ「セーラー」

そしてもう 1頭の「セーラー」には、私の主観ですが「想いは伝わる」ということを教えてもらいました。海獣類時代に 1番長い時間を共に過ごし、いろんな苦楽を共にしてきました。
イルカショーで脚光を浴びる一方でハチャメチャにしてしまうことも多々ありました。そんな時はいつも怒っている時でした。ショーが始まる前から怒っていて、ショーが始まっても怒りがおさまらずに他個体を追い回してしまい、それがショーの終わりまで続くという...。最初はなぜ怒ってしまうかはわかりませんでした。ただ、怒らずに少しでも「セーラー」に楽しく過ごしてもらうためにできることはないかと、ある時からショー開始の20分くらい前から「セーラー」の背中や尾びれを撫でるようにしました。すると、怒る頻度がかなり減ったり、また怒っていてもショー前には機嫌を取り戻してくれるようにもなりました。ショーやトレーニング以外にも共に過ごす時間が増えたことで、ポジティブになってくれました。その後も共に楽しみながらたくさんの活躍をみせてくれました。

2頭には生き物たちが見せてくれる行動や反応には意味があり、それをくみとって尊重するという飼育員の基礎を教えてもらいました。この基礎は魚類やカピバラでも一緒で、いろんな生き物たちとの接し方を教えてくれた「ビーナ」と「セーラー」には感謝しかありません。この基礎を胸に、これからも生き物たちと関わり、さらにはみなさんに生き物たちの面白さを伝えていきたいと思っています。
いつもえのすいを応援してくださっているみなさま、本当にありがとうございます。そして20周年ももうすぐ締めくくりですが、引き続き21周年もよろしくお願いいたします。

イルカショースタジアム

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