動物への感謝を伝えるこの企画、トリーターがさまざまな動物に対して思いをつづっていますね。私も10年近く担当してきたフンボルトペンギンについては、感謝してもしきれないほどの思いがあります。
1羽に絞るなんて難しく、今いる26羽はもちろん、他園館へ行ったペンギンたちや亡くなったペンギンたち、それぞれにたくさんの思いがあります。
その中でも特に感謝をしたい 1羽を挙げるのであれば、一昨年 7月に亡くなった「コンペイ」です。私がペンギン飼育に入り始めた当初は、1人に対して何羽かの担当が決まっていて、その担当ペンギンの体重や餌量の管理をしたり、トレーニングを行うなどをしていました。私がまず最初に担当を任されたのは「コンペイ」でした。
自由にやっていいよ、という先輩トリーターの言葉もあり、本当に「コンペイ」にはいろいろなことをやるのに付き合ってもらいました。元々、えのすいのペンギンたちの中でもダントツにマイペースで寝るのが好きだった「コンペイ」。何もしなければ、ほとんどの時間を陸場で寝て過ごしていました。その時ペアになっていたオスの「トップ」が隣で他のメスと交尾していてもお構いなし。いつも呑気にお昼寝していました。
そんなコンペイも、もっと活発に動くことはできるのか? というところから、名前を呼んだら来る練習を始めました。幸いにも魚を見せると目を輝かせて欲しがるタイプだったので、魚を使いながら、名前を呼んで来たら大好きな魚が貰えることを覚えてもらいました。イルカなどを担当しているとトレーニングの基盤をまず叩き込まれるところですが、私はそんなこともなく、自由に好きなようにやらせてもらえたので、遠回りではあったかもしれませんが自分で考えて何度も試して、「コンペイ」がいろいろなことができるようになることを純粋にすごく楽しんでいたと思います。
あんなに動かなかった「コンペイ」が、ショーの中でも名前を呼ぶとトリーターの前まで来るようになったり、出会った当初では考えられないぐらい活発に動く姿を見せてくれるようになりました。他にもターゲット棒にタッチ(突く)するのを覚えたり、足裏のチェックができるようになったり。足裏のチェックは趾瘤症対策のために今もペンギンたちに実施していますが、一番最初にやり始めたのは「コンペイ」です。「コンペイ」の協力があったからこそ、今のペンギンたちにも活用できています。
つらつらと書きましたが、まだ何の経験や知識も無い私のやりたいことに毎日のように付き合ってくれた「コンペイ」には本当に感謝しています。また、「コンペイ」が亡くなる間際におこなっていたチューブを使っての給餌やさまざまな処置など、現在に活かされていることもたくさんあり、「コンペイ」から学んだこともたくさんありました。
私だけに限らずですが、トリーターと担当動物、その二者にしか分からない絆は必ずあると思います。私にも初めてそれを感じさせる経験をさせてもらったのが「コンペイ」だと思っています。
飼育員として大事な好奇心や、良い意味で無知なこと。
これを忘れずにこれからも動物たちと向き合っていきたいと思います。
これを書きながら、今も空の上で好きなだけお昼寝しているのかな~なんて想像したら、会いたくなって少しだけ泣きそうになっている小形でした。