2012年11月16日
トリーター:石川

嘴は口ほどにものを言う??


ペンギンの嘴は、食べたり突いたりするほかにコミュニケーションツールとしても使われているようです。

一般に“ペンギンに突かれたぁ!”というと悪い意味にとらえられます。
フンボルトペンギンの嘴は下嘴の先はVの字に割れ、そこに鋭い猛禽類のような上嘴がぴったりとハマるようになっています。
腕や手のひらなど厚い部分を咬まれると、上は穴があいているか 1本の太めの切り傷になり、その反対側は鋭利な剃刀で切ったような 2本傷になります。
咬まれた時に手を引けばその傷は長い切り傷となります。

単純に突く行為の理由としては攻撃している場合が多いです。
人間でいう手のように、もっともペンギンにとって出しやすいツールであるようです。

争いの際には翼チョップも繰り出されるのですが、まずは嘴が先のようです。

単に攻撃と言っても、“ちょっとやめてよ”から“来るなら来い!とことんまでやってやる!”までさまざまな意味があるようです。
掃除をしていて、掃除したいところにペンギンが居て、どうしても退きたくない時は“ちょっとこっち来ないで!”くらいのチョンとした突きです。
縄張りで休んでいる時に退いてもらいたい時は、結構大変です。
絶対譲らない姿勢が見え見えです。
もう突くではなく、そんな時は咬みつくになります。

嘴の開け具合やつまみ具合も千差万別です。
「ルビー(赤色タグ)」は嘴を少し開けてつまむように咬みついて、ちょいとひねりを入れます。
服や合羽の上からでも皮膚に血豆ができます。
特に給餌中やショー中に、魚がもらえるはずのところでもらえない時などは、わざわざ追いかけてきてやられます。

しかし、嘴を使う行為は攻撃だけではありません。
今年生まれの「サン」と「ムーン」は、途中からトリーターも育雛(いくすう)に参加しているからか、遊びとスキンシップの時との対応が違います。
犬や猫と一緒に暮らしている方は何となくイメージできると思いますが、物にじゃれている時は本気で咬みついていますが、羽づくろいしている時は優しくこちらの手も羽づくろいならぬ皮膚づくろいしてくれるのです。
一方的に羽づくろいをさせてくれる個体は何羽かいますが、相互で羽づくろいができるような関係は殆どありませんでした。

他にも、ペンギンの親鳥が雛を怒る?時や、強い個体が弱い個体にその差を見せつけるため、上から首スジあたりを嘴で抑えつけたり、怪我をしない程度に咬みつきながら押さえつけたりします。
今までのペンギンたちでは、トリーターがこの行動をとる以前に逃げるか、攻撃に転じてきましたが、「サン」と「ムーン」は叱られているのがわかるらしく、身をすくめおとなしくなったり、すごすごと身を引きます。

硬い嘴ですが、ペンギンのコミュニケーションでは欠かせない私たちの手や言葉のようなさまざまな表現を伝えるもののようです。

ペンギンプールへお越しの際は、嘴を中心にペンギン同士の関係を観察してみると会話が見えてくるかもしれませんよ。

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ペンギン・アザラシ

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