2013年05月23日
トリーター:今井

グンバイホウズキ


暑い日が続くと下町生まれの私は、そろそろほおずき市か!
なんて思い出します今日この頃。
シラス漁船の湘南丸より“ウミホオズキ”が捕れたとのご連絡をいただきました。

ウミホオズキとは、沿岸にすむ巻貝類の卵嚢(らんのう/卵の詰まった袋)で、おもにナガニシ、アカニシ、テングニシが海底の岩などに産み付けたものです。
「経験豊富な漁師さんが、小さなウミホオズキで連絡とは妙だな?」
と思い、普段は自転車で急行するところを、軽自動車にして港に向かいました。
案の定、甲板(かんぱん)には一抱(ひとかか)えもある流木が転がっており、びっしりと付着したフジツボ類を避けるようにして、薄緑色のウミホオズキが見えました。
「車で来て良かった!」
水を吸った流木は大変重いので、運び方を間違えると、産み付けられた卵嚢が擦り切れてしまいます。
付着面を上にして良く見ると、2~3cmの軍配(ぐんばい)型の卵嚢が15~25枚の列となって、十数カ所並んでいます。
これはテングニシの卵嚢で、いわゆる“グンバイホオズキ”した。
なんの変哲もない流木がフジツボ類やウミホオズキによって、美しく飾られていたのが印象的でした。

さらに思い出すこと40年前、海水魚飼育がまだ難しいとされていた当時、レイアウトにはフジツボの付いた流木が良く使われていました。
それはそれで南国の海を彷彿させるような味わい深いものでした。
水質に影響を与えやすいために、現在ではあまり使用されなくなったのはちょっと残念です。

そんなこんなで今回、ウミホオズキを流木から剥がして展示するなんて、もったいなくて出来ませんでした!
そのままの状態で展示してあります!
大きさ20cmほどの成貝がどんなふうに産み付けたのか、ご想像ください。
卵が孵化して幼生が出て行ってしまった後も、しばらく腐らずに残っています。
丈夫で弾力性があるので、ホオズキ(ナス科植物)の実と同じように、口に含んで「ビー、ビー」鳴らす遊びに使われます。
ですから“ウミホオズキ”と呼ばれます。

先輩の神応トリーターは、
「展示が終了したら、鳴らして遊んでもらったらどうだ!!」
と提案してくれました。面白そうですね!

現在、相模の海ゾーン沿岸水槽に展示中ですので、懐かしい想いでご覧いただければと思っております!

ウミホオズキウミホオズキ

相模湾ゾーン

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