2014年04月12日
トリーター:加登岡

何秒息を止められるかな

最近、水中に潜る機会が増えてきたのですが、中々長く息を止めることができず、苦労しています。
一方、イルカたちは長い時間水中で息を止めることができるので、いつも羨ましく思います。
なぜ、息を長い時間止められているのか・・・
それは一回の呼吸でたくさんの酸素を取り入れられるからです。

僕達人間は一回の呼吸で肺の中の酸素の 10~ 20%が交換されます。
イルカは実に 80~ 90%の酸素を交換することができます。これにより多くの酸素をためることができます。
実際イルカたちの顔が近くにあると、呼吸をした時の風圧はすさまじいです。それだけ深い呼吸をしているのです。

しかし、肺に空気を溜めたままだと、深く潜った時に肺が水圧で潰れてしまいます。そこで、酸素は血液の中に貯蔵されます。血中のヘモグロビンと酸素が結合することで、体のいたるところに酸素が運ばれます。このヘモグロビンと結合させることで血液の中で酸素を蓄えることができるのです。
また、筋肉中のミオグロビンというタンパク質にも酸素が結合し、酸素を貯蔵する事ができます。そのため、肺にはほとんど空気が残ってないので、水圧がかかっても潰れることが無いのです。

酸素をたくさん取り入れるだけで長く息を止めていられるかというと、それだけでなく、イルカにはさらに秘密があるのです。
それが徐脈です。
これは、体内の酸素が少なくなってきたら心拍数を落すことで、酸素の消費を減らすメカニズムです。心拍数が下がれば、血液の循環を抑えられます。
また、脳などの命にかかわる器官にのみ血液が循環するように調節することで、必要最低限の酸素しか使わなくて済むようにするのです。
大量の酸素を取り入れ、節約することで長い時間息が止められるのです。

私は 5m潜るのに苦しがっていますが、バンドウイルカは水深 500mの深海まで潜ることができます。
ちなみにこの日誌を書きながら、何も考えずに息を止めてみた記録は 1分 3秒でした。 50秒超えた辺りからかなりきつかったです。これが泳ぎながら息を止めていると考えると、もっと息はもちません。
いつも見ているイルカたちが水中生活に適応した進化をとげたことを改めて実感します。
くれぐれもみなさんはイルカに対抗して、無理に息を止めないでくださいね。

イルカショースタジアム

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