2014年06月16日
トリーター:石川

真夜中の特許許可局

フンボルトペンギン「チッチ」フンボルトペンギン「チッチ」

この時点で“鳥”が浮かんでくる方はなかなかの鳥通です。
先日、丑三つ時にふと目が覚めて、耳を澄ましていると盛んに
“特許許可局、特許許可局、特許許可局・・・”
が聞こえてきました。
もうそんな時期か・・・ホトトギスの鳴き声です。

日本では夏鳥です。あのカッコウと同じ仲間で、あちらは高原などで名前の通りカッコウ、カッコウと山々や山林に響き渡る声が印象的で、このあたりでは聞いたことがありません。
この時期は夜にフクロウが鳴いたり、カエルが鳴いたり、ゴイサギが鳴いたりと夜中でも生き物たちの息吹を身近に感じることができます。

ホトトギスが鳴き始めると心中穏やかではない鳥もいます。
ウグイスもその鳥です。
ホトトギスやカッコウは託卵する鳥としても有名です。ホトトギスはウグイスなどの巣へ託卵し、先にふ化したホトトギスの雛はウグイスの卵を巣から落とす習性を持っています。まだ目も開かない雛なのですが、生き残るための行動がすでに記憶の中に刷り込まれているのでしょうか。
ウグイスも自身の卵と認識してふ化した雛は、自分より身体が大きくなっても育て続けるので、生かすための行動という目で見るとそれはそれで凄いことと思います。

ただ、ウグイスたち託卵される側も、全ての親鳥がそのままというわけではないようです。ちゃんと自身の産んだ卵を認識できて、託卵された卵を捨ててしまうものもいるようです。

ペンギンでも自身の卵を認識できる個体とそうでない個体がいます。
フンボルトペンギンは日本の水族館動物園でたくさん飼育されていますが、それぞれの施設を見ていくとどうしても同一血統になりやすいので、他の施設間でお嫁にもらったりお婿に出したりします。
また、それぞれの施設に馴染みやすいという利点から、卵を交換したりもします。ほとんどの場合は交換して託卵させてもそのまま抱くので、習性として自身の卵を認識する必要はなかったのでしょう。

ただそんな中にも自身の卵を見分ける個体もいるようです。
当館では今いるサニーやチッチ、コンペイのお母さんが自身の卵を見分ける個体でした。他個体の卵をだかせても、脇に出してしまうのです。何度やっても気が付くと申し訳なさそうに脇に置いてありました。
また、この個体に限らずですが、途中で発生が止まってしまった卵と孵化する卵を見分けているようなそぶりが見られることもありました。
こういった遺伝子が残ることも多様性という観点からはとても重要なことと思います。飼育していく上ではこういった個性もなるべくそのままに代々伝えていけるように飼育していきたいものです。

ちなみに自身の卵を見極めできるウグイスをホトトギスが認識すると、そんな遺伝子を残したくないと思うのかどうかはわかりませんが、その巣自体を破壊するという話しもあるそうです。
本当だったらこれまたすごい話しです。

そんなことを考えながら、お化けが出てくる定番の“丑三つ時” 昔の邦画で「鵺の鳴く夜は恐ろしい」なんていうフレーズがありましたが、「不如帰の鳴く夜は寝が浅い」的な感じでしょうか・・・
またウトウトと眠りに落ちていくのでした・・・。

※ホトトギスは夜だけ鳴く鳥ではありません。
昼も夜も鳴いています。日中にも通る声で“特許許可局 特許許可局 特許許可局・・”と聞くことができます。
夜鳴く鳥はあまりいいようにはいわれていない鳥が多いようです。
ホトトギスの漢字名はいろいろありますがどれもちょっと意味ありげなものばかりです。不如帰、杜鵑・・・。

※鵺(ヌエ)は想像上の生き物(妖怪?で)いろいろな生き物の部位でできているといわれています。声はふえを吹くような鳴き声といわれていて、ちょうど夜に鳴くトラツグミの声が“それ”だとされています。(トラツグミも夜だけではなく日中も鳴くようです。)

※丑三つ時(うしみつどき)

※特許許可局(トッキョキョカキョク)

※不如帰、杜鵑(どちらも“ホトトギス”と読んでいただいてOKです)

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