2015年06月21日
トリーター:鈴木

キアンコウ展示準備中

キアンコウキアンコウ

こんにちは、鈴木です。
実は現在、バックヤードに大変な人気者をかくまっております。
アンコウの仲間でその名も「キアンコウ」といいます。

そんな彼は風貌から一見、大ざっぱな性格に見られがちですが、実は大変デリケート。細かい気配りを怠るとすぐにへそを曲げる気難しいやつです。
でも一生懸命手を加え、愛情を注ぎ、良い飼育環境が整うと一気に慣れ始めます。まさに素っ気なさと人懐っこさを兼ね揃えた、ツンデレで小悪魔タイプな憎めないやつです。やはり人気者スペックの持ち主ですね。

体は成長すると 1mを超える大柄で、鍛え抜かれたような、百戦錬磨を思わせるボディーは見るからに強固。でもそれだけではないんです。全身に皮弁(ひべん)と呼ばれるフリルのような衣装を纏い、機能美だけでなく、見た目のおしゃれも忘れません。やはりスターは違いますね。

でも、ほんとうは皮膚や筋肉はやわらかく、ぷるぷるしたゼリーのような手触りです。実はこのお肉にはコラーゲンもたっぷりです。
顔は恐いですが、ギャップがある癒し系な感触、さらにコラーゲンといった心身ともに女性ウケ抜群な存在です。いやー、完全にモテ男です。(現在性別は不明です)
さらに、形も大変ユニークで、ユーモアもちゃんと忘れていませんよ。まるで英国紳士のようです。

さて、今のところなんだかチャラチャラしたようなやつに思えてしまいそうですが、口は完全に武装兵器級です。
まずその大きさ。体の半分は口といっていいほどです。口周辺には全くかわいさのギャップは無く、ぷるぷるな筋肉は薄く、骨格の固さがむき出しになっています。
まるで剣山のような、たくさんの鋭い歯を持っており、僅かに触れただけでも肉を切り裂きます。さらに一度口に入れた獲物は絶対に逃がすまいと、人間の奥歯のような、すり潰し喉に送り込む役割のとげとげの骨を喉の奥の上下に持っています。お、恐ろしい・・。

ただ、そんな強い武器を持ちながら、獲物の待ち方は至って慎重です。砂に身を潜め、ひたすらじっと獲物を待ちます。そして捕まえ方はとても繊細。獲物を感じると背びれが変化した疑似餌が付いた突起を、繊細なタッチで滑らかに振り獲物を誘います。そして最後に食べる時はかなり大胆です。誘われた獲物を一瞬にして大きな口で捕らえます。その素早さはすごいです。
冷静さと繊細さで相手を窺い、勝負所は大胆に行く、まさに最強の仕事人ですね。ぜひ見習いたい!

えー、ご紹介が長くなりましたが、そんな見た目と中身でギャップがあり、慎重で繊細で大胆な生まれながらの人気者の彼、いや彼らは( 2匹います)、現在元気にバックヤードで飼育中です。
でもここまで来るのには結構苦労しました・・。

やはり体が柔らかい分、傷がつきやすく、漁師さんの網に入った段階で、かなりの深手を負っています。特に今回 2匹のうちの片方は来て早々に全身傷だらけになってしまいました。
そこから、薬浴をしたり直接皮膚に薬を塗ったり、抗生物質のカプセル入りの餌を与えたり・・。もちろん自分では餌は食べませんので、直接食道に入れてあげたりしてやりながら、根気よく治療をすると 1か月半辺りから徐々に回復し始め、2か月を過ぎるとほとんど完治しました。嬉しかったですね。
今では生き餌を食べたり、調子が良ければ、釣り糸に付けた魚を食べるまでになりました。

これで準備はおおかた整いました。いよいよ展示が見えてきましたよ。
今後もみなさまにお披露目できるよう頑張りたいと思います。

最後に、ここまでまるで欠点なく、完璧な存在のように書かせていただきましたが、一つ欠点を挙げるなら、とっても地味です(笑)。砂に潜って同化し、ほぼ見えないかもしれません。でもそこが僕は一番好きなところです。
もし展示をすることができたらぜひよーく探してみてくださいね(^_^)


すみません、最後にもう一点だけ。
前回の日誌( 2015/ 05/ 21 ウケグチメバルのその後・・ )に書かせて頂いた、ウケグチメバルですが、残念ながら先日死亡いたしました。もし展示を楽しみにしてくれていた方がいましたら、本当に申し訳ありません。私の力不足です。
ただ、“えのすい”では初めての種ということで、飼育することでいろいろと分かり、今後に繋がる貴重な情報もたくさん得られました。これを胸により精進いたします。

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