2017年09月08日
トリーター:遠山

2年間の成果。

ゴマフアザラシ『ワカ』ゴマフアザラシ『ワカ』

私がトリーターになって丸 2年が経ち、3年目に突入しました。
時間が流れるのは早く、1年があっという間に過ぎていくような感じです。
それは歳を重ねるごとに 1年が経つのが早いと感じますね。

さてさて私が入社した 2年前、最初に与えられた仕事、、、、それはゴマフアザラシの『オガ』と『ワカ』を担当するということでした。
『オガ』は 2013年 6月 6日から、『ワカ』は 2014年 6月 25日から当館で飼育しているゴマフアザラシです。
私が担当するまではトレーニングはほとんどおこなっておらず、私が任せられた 2年前から本格的なトレーニングを開始しました。

担当当初は本当に大変でした。
・アザラシに餌を与える前には、ウェットスーツから必ずカッパとポロシャツの作業着に着替える。
・1人で近づいて、餌はサンマの頭と尻尾を切った胴身の 3つ切りのみを与える。
このルーティンから 1つでも違うことをすると餌を食べなくなるというものでした。
例えば 2人で入ったり、ショーで着用しているウェットスーツでおこなったりすると、警戒して餌を食べてくれないということです。


トレーニング初期。カッパとポロシャ

私は、“えのすい”に入社する前は、別の水族館で主にアシカやアザラシを 14年間トレーニングしていた経験があります。
その経験を元に少しずつではありますが、まずはアザラシをトレーニングする環境を整えました。
最初は餌の種類を増やすことです。
特に『ワカ』は好き嫌いが多く、私の頭をいつも悩ませていました。
特にシシャモが嫌いで、小さく切ったシシャモを大好きなサンマと混ぜて与えたり、切ったサンマは食べられるけど、丸ごと 1匹のサンマは食べられないので少しずつ大きさを大きくして与えていく事を毎日地道に続けました。


苦手な丸のサンマが食べられるようになった 『ワカ』

また服装もウェットスーツでも警戒しないように少しずつ変え、今週はカッパを着用、翌週は普通の作業ズボン、その他フリースを着たり上下カッパを着てみたりと毎日いろいおな服装で入るようにしました。人数も 1人から 2人に増やしても大丈夫なように、さらに 3人目が遠くから見ていても、2頭が落ち着いていられるように、いろんな環境で作業するようにしました。


ウェットスーツでトレーニングができるように


トリーターが3 人入っても落ち着いてできるように

本当に毎日が悪戦苦闘の連続でうまくいかない時がほとんど。結果が見えず焦っていた自分もいました。
アザラシの給餌に行くこと、そしてトレーニングをすることに自信をなくしていた時もありました。
任せられたアザラシのトレーニングが本当にうまくいくのか。 1日の仕事が終わり、ウェットスーツから作業着に着替える際にシャワーを浴びながら毎日の反省をしていました。
なんでうまくできないのか、あそこはこういう風にした方がいいのではないのかと常に頭をフル回転していた日を懐かしく思います。
でも必ず成功させてやる、という気持ちが私を前へと押し出してくれましたし、一緒にアザラシを担当する仲間の協力があったからこそ頑張ってこられたのだと思います。
地道なことを続けた結果、今では 1種類の魚から目標としていた 8種類まで食べられるようになり、人数やウェットスーツなども全く気にすることはありません。
またいろいろなこともできるようになり、今では健康管理として体重測定や体温測定、ボールを運んで来る、ジャンプをするなど、約 20種類近くの種目もできるようになりました。
ここまでできるとは 2年前の私からは想像もしていなかったことです。


怖かった岩場に初めて上がることができた 『オガ』


体温測定

トレーニングも少しずつ軌道に乗り出した頃、飼育している上で 1つの問題を解決する為に動き出しました。
それは『ワカ』の全身です。
通常は 1年に 1回、古い毛が抜け新しい毛が生えてくる換毛があります。
ただ『ワカ』の換毛は正常にはおこなわれず、新しい毛が生えていなかったこと、いわいる全身に毛が生えていない状態でした。


新しい毛が生えていない 『ワカ』

これに関しても獣医と相談し、換毛前に免疫を高める薬を倍量与えることにしました。
最初は全く効果がないように感じましたが、これも日が経つにつれ『ワカ』も全身に新しい毛が生え、綺麗なゴマ模様になった時の感動は今でも忘れられません。


少しずつ新しい毛が生えてきている『ワカ』


全身綺麗なゴマ模様の『ワカ』

そんな『オガ』と『ワカ』、現在私は担当しておらず、櫻木、秋山、堀内の 3名のトリーターが担当しています。
この 3人も最初はアザラシのトレーニングで、うまくいかないこともたくさんありましたが、今では任せるぐらいまでに成長しており、私が全く関与しなくても『オガ』と『ワカ』の体温測定ができるようになりました。これは本当にすごいことです。
トレーニングを実施する上で、1番大事なのは彼らの命を守るということです。
ですがトリーターだけが一方的に進めても何も進みません。
そこには『オガ』『ワカ』の協力があってからこそ成り立つものです。
トレーニングという言葉は非常に難しいように聞こえるかもしれませんが、楽しいゲームだと思ってもらえると良いでしょう。
長い時間をかけてトレーニングをしていると、動物の気持ちとトリーターとの鍵がひっかかる時があります。その鍵がひっかかった瞬間、動物たちはトリーターたちに警戒をせず、全てを受け入れるようになります。
この時間を一緒に感じた時に、トリーターという仕事をやっていて良かったと思う気持ちになります。

私がトレーニングする上で大事なことは、彼らの気持ちを常に把握し、いつも前向きに実施するということ。そして彼らのコンディションを常に良くするということです。
コンディションをしっかりと整えていれば、どんな時でも彼らは答えてくれます。
今の『オガ』は後方宙返りと採血の練習をしています。
『ワカ』は輪くぐりジャンプと採血の練習をしています。
おそらくどちらも近いうちに完成すると思われます。
将来的には超音波検査、精液採取もできるようにしたいという強い気持ちもあり、まだまだやらないといけないことがたくさんありますが、この 2年間で『オガ』『ワカ』は飛躍的に成長しました。
このように、時間をかければどんな動物でもいろいろなことができるようになります。
成長した 2頭を見ていると、私がやってきたことは間違っていなかったなと思える瞬間でもあります。
まだまだ成長していく 2頭、今後は繁殖にも力を入れ、彼らの赤ちゃんが誕生することも願っています。
最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。

ペンギン・アザラシ

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