ゴマフアザラシ「ココ」ゴマフアザラシの「ココ」。約 1年半前に“えのすい”に来てから、私がずっと担当しています。
“えのすい”に来てから、ハイジャンプやアクリル面に行って挨拶するなど、さまざまなことができるようになりました。
でも他のアザラシにはできて、「ココ」だけができないことがありました。
それは、体温測定です。
アザラシの体温測定は、肛門に細いプローブと呼ばれる管を 20cm入れます。
この体温測定をするには、いろいろなトレーニングが必要です。
もちろん肛門にプローブを入れることは勿論のこと、肛門に指が触れたりしても落ち着いていられるか、そこが重要!!
「ココ」は頭や背中を触られるのは問題ないのですが、腰からしっぽ、後肢(後ろの足)を全く触らせてくれませんでした。
慎重に体を触る
ちょっとでも私の手がその部位に当たると、
もうやめろ~~!
といわんばかりにブンブン体を振り回し、体全身を使って嫌だとアピールしてきます。
嫌がって後肢を振ります
非常に困ったもんです。
体温測定をするには、落ち着いてリラックスしないとできない。この状況ではとてもじゃないけど無理。
私の頭を物凄く悩ませました。
どうしたら「ココ」は体を触らせてくれるのだろうかと。
久々に強敵現る!といった感じです。
私の経験上、以前にも体温測定ができないアザラシがいました。
その子は体勢を変えるだけであっという間に体温測定ができたことがありました。
うつ伏せでは嫌がっていたのですが、仰向けの状態だと一瞬でできたことを思い出し、それを「ココ」にもあてはめてみようと。
でも結果はダメ。できませんでした。
ここからは私と「ココ」の長いトレーニングのスタートです。
慎重にトレーニングを実施しました。
陸で体を触るのが嫌なら、プールの中やプールに近い所が落ち着くと思い、プールに近い所でトレーニングをしたり、背中を触ることは嫌いじゃないので、背中をずっと触りながら苦手な尻尾を一瞬だけ指先でちょんと押すぐらい。
これを本当に毎回毎回、地味に続けていきました。
本当に地味なトレーニングを続けていき、ようやく尻尾に触れても大丈夫になってきた時に、最も苦手とする後肢を触ることにしました。
触るといってもほんの一瞬だけ、ちょこんと当てるだけです。
後肢を触るだけでブンブン体を振っていた「ココ」ですが、そのような地味なトレーニングをすることにより、少しずつ後肢も触れるようになってきました。
後肢を触る
後肢が触れるようになってきてからは、肛門に指を当てたり、実際にプローブも当てたり少しずつできるように。
それを連続してやってみると、意外にリラックスしています。
そこでよし!! 1回プローブを肛門に入れてみよう。
いざ体温測定
おそるおそる肛門にプローブもいれていきます。
肛門にプローブを入れる私がいつも異常に緊張し、手に力が入らないように慎重に慎重に。
そしてなんと約 20cm挿入!!!
肛門にプローブを入れる
なんと出来ているではありませんか!!! 体温 36.6℃
やりました!!
やっとできました。
体温測定のトレーニングを始めて半年以上かかりました。
本当に長かったですが、やっとできました。
嬉しさのあまり
「よっしゃー!!」
と声を荒げたのを今でも覚えています。
肛門にプローブが入ってる
みなさんに知っていただきたいのは、動物にも必ず得意なことや苦手なことがあります。
みんながみんな何でもできるわけではありません。
これは人間も一緒。
苦手なことでも時間をかけて接していれば、その苦手も克服することができるということ、そしてこのトレーニングというのは、動物の健康を守る為にも、必ず必要であるということです。
長くなりましたが、最後まで読んでいただいてありがとうございました。
ゴマフアザラシの「ココ」を見かけたら、体温測定できるようになったんだね。とぜひ声をかけてあげてくださいね。