2019年07月07日
トリーター:伊藤

驚愕! 泳ぐリンゴガイ

スクミリンゴガイスクミリンゴガイ

みなさまこんにちは。
昨年の7月の日誌で、パービャウの水槽に殖えた巻貝が、水面に浮く行動を取り上げたことがあります。その時ちらっと、国外外来種のスクミリンゴガイの稚貝も同じ行動をとると書きました。[ 2018/07/05 川の貝の話題 ]

先日、調査で生きたスクミリンゴガイを入手する機会がありました。バックヤードで飼育して、観察していたところ、大きな個体もこの行動をとることが観察されたので速報します。

普段はだらだらと水底に転がったり、ゆっくりと壁面をはっている本種ですが、水面に大好きな野菜を浮かべると、敏感に「飯だー!」と言わんばかりに活発に動き出しました。
ところで野菜は浮いています。奴らが壁面から乗り移れないように、水槽の真ん中あたりに浮くように「いじわる」していると、1個体が壁面と水面の境目で、口とその両脇の腹足を水面に広げだしました。
ちょうど私たちが遠くのものを取ろうとして「もうちょっとで届くのに~」と頑張っている感じに見えました。残念! そんなんじゃ届かないよ、と思っていた矢先、ふわっとそのまま水面に張り付き、野菜に向かっていくではないですか! かなり一直線に向かっていきます。これはもう、泳いでいると言ってよいでしょう。
しばらく見ていると、少なくとも3個体が同じような手段で野菜までたどり着きました。大きな個体は殻幅2㎝ほどはありました。このサイズの淡水巻貝が、小さなサカマキガイやタイワンカワニナと同じ技を使えるのを知り、ちょっとした衝撃を受けました。


離陸体勢に入ったスクミリンゴガイ


水面を裏返しにはって野菜に到着。

単なる珍行動で済まされてしまいがちな?巻貝の水面張り付き行動ですが、自然界における意義を考えると興味深いです。海でいえば、ある種のウミウシや翼足類のように「がっつりと」泳ぐものもありつつ、干潟にすむ「とうてい泳げそうもない巻貝」がこの珍行動により、人の手を借りずに生息域を拡大した事例も知られています。
本種に関しても、タニシなどの同サイズの在来種よりも、餌にありついたり、遠くまで移動するのに有利に思えます。まだまだデータが足りず、妄想の域を出ませんが、水田のほか、波のあまりない沼や湖においては、水底をはうしかないライバルたちよりも、いち早く、向こう岸まで移動できるのではないでしょうか。面白いので引き続き観察を続けてみたいと思います。

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