2020年06月29日
トリーター:杉村

シロウリガイ類 165日の飼育と行動観察

2020年1月から、JAMSTECの海洋調査船「新青丸」で採集されたシロウリガイの仲間を、長期飼育ならびに行動観察実験のため、深海Ⅰの化学合成水槽で飼育をしてきました。
今回の飼育日数は 165日(6月25日飼育終了)となりましたが、この記録は2014年の 173日に次ぐ飼育日数でした。
飼育終了後の解剖によって、シロウリガイ類の飼育の難しさを実感しました。
5か月を超える飼育が可能になってきましたが、まだまだ課題は山積です。

本当ならば、飼育記録まであと・・・とお話ししたかったのですが・・・残念です。

この飼育期間中にシロウリガイ類の生態を明らかにするために、行動の観察を定点カメラで可能な限りおこなってみました。
その結果、断片的ではありましたが行動を記録することに成功しましたので、ここで少し紹介したいと思います。

この個体の行動を追いかけると、この 5か月の間、実に良く移動していることがよく分かりました。
飼育開始当初は水槽の奥の方にいましたが、その後、水槽の後ろ半分をグルグル 2周ほどしてから、水槽中央に移動しました。
そして、左側(水槽全体では中央部分)へ移動、しばらくは水槽に設置している鯨骨周辺にいましたが、その後は中央横切る形で右端まで。
今度は前面のガラス面近くに出て来た後は、再び中央付近まで移動していました。
・・・ですが、その移動の早さは分速 1cmにも満たないのです!!
深海生物たちは、深海ではその水圧や低水温、エネルギー消費減、またはその他の理由で非常にゆっくり行動しています。
シロウリガイ類の仲間の例外ではありません。
深海生物からみれば、私たち人間の動きは速すぎるのか知れませんね。

シロウリガイの仲間が、なぜ移動するのかについては解析中です。


現在では、シロウリガイの仲間をお目にかけることができませんが、今後も“えのすい”ではシロウリガイ類の生態の解明にチャレンジしていきたいと思います。
そして、その他にも貴重な深海生物の飼育や研究については、今後もこのトリータ日誌や調査航海日誌などで紹介していきますので、チェックしてみてください。

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-

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