2020年10月31日
トリーター:杉村

長期飼育記録更新中

間もなく6年と7か月!!「サガミハオリムシ」

深海l ~JAMSTECとの共同研究~ の幅 3mになる「化学合成生態系水槽」で、「サガミハオリムシ」を飼育公開しています。
太さが 1cm弱で長さが 40~50cmの、薄茶色に節くれだったような筒がパンチボードに固定されています・・・ それが「サガミハオリムシ」です。
・・・と言っても、この筒は「棲管」といって、自らが作る住処でその中に本体である身体が入っています。

現在公開中のサガミハオリムシが、“えのすい”にやってきたのは 2014年 4月です。JAMSTECとの共同研究にて、相模湾水深約 1,000m付近より採集されました。
それから数えて、間もなく、6年と 7か月を迎えます。
現在、サガミハオリムシは飼育研究を行っている施設がほとんどないという、かなり地味ですが貴重な深海生物です。

かなり地味なので、飼育担当者として、ちょっとアピールです!

サガミハオリムシは、同じ仲間のサツマハオリムシとは違って、熱水噴出域ではなく、海底からゆっくりと硫化水素の染み出てくる「湧水域」という場所に棲息しています。
海底では、泥の中に埋まった岩などに付着して、海底からゆっくりと染み出てくる硫化水素(多くの生物にとって“毒“)を取り込み、体の大部分を占める栄養体に共生している化学合成細菌のエネルギー源として利用して生きています。
※ゴカイなどと同じ多毛類の仲間で、口も、肛門もありません。

“えのすい”では、水底に敷いた泥や硫化ナトリウム水溶液の添加によってハオリムシにエネルギーである硫化水素を供給するシステムを開発して、飼育研究を行っています。

大部分の時間を棲管内で過ごしていますが、時々棲管から、白い円形の蓋と赤い鰓を外に出していることがあるので、ちゃんと生きていることが分かりますよ。


サガミハオリムシ

長期にわたる飼育によって、水槽環境と現場環境とでは鰓の出るタイミングなど、違いあることも分かってきていますが、その詳細については未だ謎だらけです。
“えのすい”では、さらに飼育を行いながら、さらなる解明への糸口を探るべく奮闘しています。

動きのとても少ない生物ですが、じっくり観察してみることで、新しい発見があるかも知れません。

開館中、たまにぼーっと水槽を覗いているトリーターが居たら、私かも・・・

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-

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