2020年11月25日
トリーター:山本

枝垂桜クラゲ

日本の国花である桜。その「桜」から名前がつけられているクラゲがいます。「シダレザクラクラゲ」です。現在、江の島で採集してきたものをクラゲサイエンスで展示しています。せっかく綺麗な状態なのですが、存在感がちょっと薄め…ですので、今回は日誌で紹介していきます。


和名:シダレザクラクラゲ
学名:Nanomia bijuga
分類:ヒドロ虫 綱管クラゲ目(胞泳亜目) ヨウラククラゲ科 シダレザクラクラゲ属

リラックスしたとき、ふわっと触手を広げた姿がシダレザクラっぽい…です。
カツオノエボシなどと同じ「管クラゲ」の仲間で、私たちが目にする姿は、それぞれ役割を持った「個虫」が連なっている、いわゆる「群体」と呼ばれる状態です。ぱっと見、何が何だかわからないような、謎の生きもの感がありますが…ごちゃごちゃしているように見えて、意外と構造はシンプルです。
本種の構造は、大きく分けて「気胞体(きほうたい)」・「泳鐘部(えいしょうぶ)」・「栄養部」に分かれています。気泡体で浮力を調整し、泳鐘部で移動、栄養部で摂食・消化を行います。拡大するとこんな感じです。


泳鐘部と栄養部の上部にそれぞれ成長帯のようなものがあり、新しい個虫が作られていきます。つまり、どちらも下へ行くほど古い個虫であるということです。拡大写真で見ると、下の方が大きく、上に行くにつれて小さい個虫が観察できます。本群体は、まだまだ成長途中のようで、泳鐘の数は少なめです。

シダレザクラクラゲを調べていると、面白い論文を見つけました。複数の泳鐘(+その縁膜)を使って、前進・後退・旋回・反転等、かなり複雑に、器用に動くことができるという内容です。考えてみれば、管クラゲ以外のお椀型のクラゲたちは、基本的に拍動して一方向に進みます。それに比べて、シダレザクラクラゲはくねくねと複雑な動きをするんです。
分布もかなり広いようで、世界中の複雑な海流に適応し、器用に生きているのかもしれませんね。普段は外洋で生活している種なので、なかなかお目にかかれないレア種です。ぜひこの機会にご覧ください。

クラゲサイエンス

RSS