2021年03月04日
トリーター:遠山

ミナミアメリカオットセイのアポロと私

ミナミアメリカオットセイ「アポロ」ミナミアメリカオットセイ「アポロ」

みなさん“えのすい”には何頭のアシカやアザラシがいるか知っていますか?
私が入社した6年前は全部で9頭生活していましたが、現在ではオタリアが5頭、ミナミアメリカオットセイが5頭、ゴマフアザラシ4頭の計14頭が生活しています。

さてタイトルにもあるように、ミナミアメリカオットセイの「アポロ」と私、本格的にコンビを組んで4年近くになります。物覚えが早いのですが、最近は警戒心が特に強くなり、ちょっとした環境の変化などでショーに出られなくなることがあります。

“えのすい”に何度も来ている方なら知っているかもしれませんが、最近のイルカ・アシカショー「きずな/kizuna」に私の担当のアポロは参加していません。

それは去年の11月の終わりです。いつものように外の部屋に移動するために廊下を歩いていたときです。急に何かに驚き、一目散に自分の部屋に帰っていきました。


部屋の前の廊下

すぐにもう一度、部屋から出そうとしても私の近くにさえ来てくれません。このままだと部屋から出てきたとしても、しばらくは廊下には出られないなと頭をよぎりました。
案の定、その日は部屋から全く出ることができませんでした。長い廊下を歩かないとショーをするステージにはたどり着けません。部屋から出られない、それすなわちショーにも参加できないということです。

12月の前半には部屋からほんの少し廊下に出られるようになったものの、ちょっとでも外に行こうとすると自分の部屋に帰ってしまう、昨日できたことが今日はできない。1歩進んで2歩下がるような状態です。担当者としては本当にしんどい日が続きました。

ここで大切なことがあります。アポロがショーに出ていないと他のアシカの出演回数が多くなり、迷惑をかけてしまっているのではないか。アポロはついこの間までショーに出られていたから、目の前の事よりも、もっと先の事をやった方が良いのではないか。とアポロの気持ちを無視して焦ってトレーニングしてしまうことがあります。
私自身も最初は焦っていたときがありました。ただし、焦りは禁物ですね。
そういった状況でも地道に毎日とコツコツとトレーニングを積み重ねていくこと、そして餌となる魚をしっかりと与えて体重もキープ、もしくは増加させること。とにかく自分のやっているトレーニングを信じ、私が休みの日でもバックアップしてくれるトリーターに伝言すること。そうすることで、ほんの少しずつではありましたが、昨日できたことが今日もできるようになり、2歩進んでも1歩しか下がらないということにも繋がっていきました。


練習中のアポロ


イルカプールの横を通るトレーニング


ステージまであと少し

今は他個体と一緒にステージに出て、ショーで実施するダンスも問題なくできるようになりました。ここまでできるようになるのに約3カ月かかりました。本当に長かった。ショー復帰まで、あともう少しというところです。

この仕事をしていて、楽しい事、しんどい事などたくさんあります。そして経験している人でないとなかなかわかりませんが、自分の担当個体がうまくいかないときほど、しんどいことはありません。
動物たちにも常に気持ちがあり、その一つ一つの行動にはちゃんとした意味があります。それぞれに感情があり、得意な事や苦手な事もちゃんとあります。
私は動物のトレーニングは上手ではありませんが、これからも動物の気持ちをもっと理解できるようなトリーターになっていきたいなと思っています。


田中トリーターと

RSS