2021年05月23日
トリーター:山本

あくちぬら

今回は、前回ざっと紹介した続きで、「クダウミヒドラ類」の生活史に関わる内容をちょっと詳しく紹介していきます。
「アクチヌラ」。
あまり聞いたことのない単語だと思いますが、何かというと・・・
こんなやつ ↓


これは、刺胞動物の「クダウミヒドラ類」などが持つ、ちょっと特別な形をした幼生期の状態です。
丸い体から数本の細長い触手が放射状に伸びたような、ドラ〇エのスピ〇スライム的な形をしています。
他の動物プランクトンが普通は持っている、遊泳するための器官や組織が全くないという特徴を持ち、言うなれば「プランクトン・オブ・プランクトン」。
サイズは3mm程なので、意識しながら見ていると肉眼でもしっかりと確認することができます。
アクチヌラの語源は「放射状の幼い命」だそう。可愛い響きの言葉に深い意味が込められています。
現在クラゲサイエンスで展示している「キタクダウミヒドラ」は、まさにこのアクチヌラ幼生の時期を経て現在の姿となったのです。

クラゲ類は、多くの種類が(※例外もたくさんあります)
卵 → プラヌラ幼生 → ポリプ → メデューサ(クラゲ) → 卵 → ・・・
と繰り返しながら海で生活をしています。

アクチヌラ幼生期を持つクダウミヒドラ類は
卵 → アクチヌラ幼生 → ポリプ → 卵 → ・・・
と繰り返す、言わば「クラゲを出さないタイプのクラゲの仲間」なのです。
ポリプから出たアクチヌラ幼生は、良き居場所を見つけて、こんな感じで付着します。

(※因みにこの写真は「ベニクダウミヒドラ」で、現在展示している「キタクダウミヒドラ」とは別種です。)

さて、展示している「キタクダウミヒドラ」ですが、現在は「ポリプ」の状態です。
しかし、朝水槽を見ると・・・



増えとる!・・・ということは、展示水槽の中には「雄の株」と「雌の株」の両方が存在しており、アクチヌラを出してちょっとずつ増えているんですね・・・。
つまり、展示水槽の中でも遊離したてのアクチヌラを見ることができるチャンスがあるということです。見れたあなたは超ラッキー。

アクチヌラ幼生については、研究例がいくつもあり、付着機構(どうやって物にくっつくか)などが詳しく調べられており、そのあたりについてもまた紹介したいと思います。
まだまだ元気に満開なキタクダウミヒドラを、ぜひクラゲサイエンスでご覧ください。

2021/03/31 ヒドロ花満開

クラゲサイエンス

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