“えのすい”から本日発表! ワタボウシクラゲに続いて、またまたクラゲ界がざわつく大ニュースです。
なんと、江の島周辺でも毎年出現する「ギヤマンクラゲ」が実は「新種」でした!!
!?!?!?
さてさて、どういうことかといいますと…
これまで日本で出現するギヤマンクラゲは、すべて「Tima formosa(←これは学名といって世界共通の名前です)」という種だと考えられていたのですが、科学技術が進み、より詳細な形態観察や遺伝子解析をすることによって、これまで記載のない、いわゆる「新種」であることが分かったのです。この研究は、私たちもガッツリ関わらせていただいたので、今回はそのお話をしようと思います。
まず、その記載された論文ですが、「Zoological Science」という雑誌に掲載されました。6月16日現在、雑誌はまだ発行されておらず、オンラインで見ることができる状態です。「Tima nigroannulata (Cnidaria: Hydrozoa: Eirenidae), a new species of hydrozoan from Japan」という論文ですので、原文が気になる方はぜひご一読ください。クラゲで有名な加茂水族館と海外の研究者の方々と協力して作りました!
題にあるように、ギヤマンクラゲの学名は「Tima formosa」から「Tima nigroannulata」となりました。本種は“えのすい”が世界で初めて繁殖に成功しており、今でも展示“皇室ご一家の生物学ご研究”や“クラゲサイエンス”で通年展示しています。数cmサイズでそんなに目立たないかもしれませんが、ガラスのように透き通った体が美しく、ファンも多いのではないでしょうか。江の島でも毎年決まって春~夏にかけて出現します。本当に身近なクラゲです。
それでは内容です。
はじめに、「Tima formosa」という種は、1862年にアメリカのマサチューセッツ湾で最初に記述されました。その後、日本で見つかったとあるクラゲが、アメリカで記載された「Tima formosa」と同じものだ!と種同定され、「ギヤマンクラゲ」と呼ばれながら記録されていきました。最も古い論文として書かれた記載は1925年のようです。
では、新たに記載された「Tima nigroannulata」は、他のギヤマンクラゲ属(Tima formosaを含め 4種)のクラゲたちと、形態がどう違うのでしょうか。
① 傘は通常半球形であること
② 縁触手は 50本以上であること
③ 黒い色素顆粒が傘縁の周囲に環を形成し触手や放射状管にまで伸びることがあること
これがTima nigroannulataの特徴です。
ちなみに、これらはある程度成熟した個体の特徴です。幼若個体の見分けは(どのクラゲでもそうですが…)、共通した特徴ばかりでかなり難しいと考えられます。①や②は保存状態や成長段階によって変わってくるので、③が最大の特徴といってもいいのではないでしょうか。その特徴部分を拡大した写真がこちら。