2021年06月16日
トリーター:山本

2021/06/16 ギヤマンクラゲが新種でした

“えのすい”から本日発表! ワタボウシクラゲに続いて、またまたクラゲ界がざわつく大ニュースです。

なんと、江の島周辺でも毎年出現する「ギヤマンクラゲ」が実は「新種」でした!!

!?!?!?

さてさて、どういうことかと言いますと…
これまで日本で出現するギヤマンクラゲは、すべて「Tima formosa(←これは学名と言って世界共通の名前です)」という種だと考えられていたのですが、科学技術が進み、より詳細な形態観察や遺伝子解析をすることによって、これまで記載のない、いわゆる「新種」であることが分かったのです。この研究は、私たちもガッツリ関わらせていただいたので、今回はそのお話をしようと思います。

まず、その記載された論文ですが、「Zoological Science」という雑誌に掲載されました。6月16日現在、雑誌はまだ発行されておらず、オンラインで見ることができる状態です。「Tima nigroannulata (Cnidaria: Hydrozoa: Eirenidae), a new species of hydrozoan from Japan」という論文ですので、原文が気になる方はぜひご一読ください。クラゲで有名な加茂水族館と海外の研究者の方々と協力して作りました!
題にあるように、ギヤマンクラゲの学名は「Tima formosa」から「Tima nigroannulata」となりました。本種は“えのすい”が世界で初めて繁殖に成功しており、今でも展示“皇室ご一家の生物学ご研究”や“クラゲサイエンス”で通年展示しています。数cmサイズでそんなに目立たないかもしれませんが、ガラスのように透き通った体が美しく、ファンも多いのではないでしょうか。江の島でも毎年決まって春~夏にかけて出現します。本当に身近なクラゲです。

それでは内容です。
はじめに、「Tima formosa」という種は、1862年にアメリカのマサチューセッツ湾で最初に記述されました。その後、日本で見つかったとあるクラゲが、アメリカで記載された「Tima formosa」と同じものだ!と種同定され、「ギヤマンクラゲ」と呼ばれながら記録されていきました。最も古い論文として書かれた記載は1925年のようです。

では、新たに記載された「Tima nigroannulata」は、他のギヤマンクラゲ属(Tima formosaを含め4種)のクラゲたちと、形態がどう違うのでしょうか。
① 傘は通常半球形であること
② 縁触手は50本以上であること
③ 黒い色素顆粒が傘縁の周囲に環を形成し触手や放射状管にまで伸びることがあること
これがTima nigroannulataの特徴です。
ちなみに、これらはある程度成熟した個体の特徴です。幼若個体の見分けは(どのクラゲでもそうですが…)、共通した特徴ばかりでかなり難しいと考えられます。①や②は保存状態や成長段階によって変わってくるので、③が最大の特徴といってもいいのではないでしょうか。その特徴部分を拡大した写真がこちら。



これですね、黒い点々が見えます。Tima属の中でも、これがあったら「Tima nigroannulata」と同定できます。

さて、ギヤマンクラゲの新たな学名となった「Tima nigroannulata」ですが、種小名の「nigroannulata」はラテン語のniger(黒)とannulus(環)を組み合わせた意味を持ち、本種の傘の外周部にある黒い色素が環状になっている(特徴③のこと)ことにちなんでいます。ちゃんと意味があるんですね。意識しながら見ると本当に黒い輪っかが動いているように見えるので、素敵な名前がつけられたなーと思います。


日本では他に近縁種が(今のところ)いないことから、和名はそのまま「ギヤマンクラゲ」です。そして英名(英語圏での名前)は「エレガントジェリー」だそうです。…エレガント!

その他、ギヤマンクラゲ属(Tima)のこれまでの歴史的背景や形態情報のまとめなど、情報盛りだくさんとなっており、全部説明すると大変ですのでこれくらいにしておきます。とりあえず、この論文を読めば「Tima nigroannulata」だけではなく、ギヤマンクラゲ属全体にかなり詳しくなることができます。私が言うのも大変おこがましいのですが、超々おすすめの論文です。“えのすい産”のギヤマンクラゲたちも活躍しています。気になった方はぜひぜひご覧ください。

少し個人的な気持ちを言うと、自分が大好きなクラゲっていうのもありますが、こんなにも身近なクラゲの学名が変わる瞬間に関わることができて、ほんとにほんとに感激です。今朝展示の学名を変える時も、なんだか感極まっちゃいました。


そして、私は恥ずかしながら、この論文の話が来るまで全く疑うことなく日本のギヤマンクラゲは既知種である「Tima formosa」だと思っていました… もしかしたらこういうパターンで未記載種っていうのがまだまだいるのかもしれませんね。私の論文での情報収集や形態観察が足りない証拠です…。もっともっといろんな方向で目を凝らさねば…!

正確に言うと、日本で出現するすべてのギヤマンクラゲが「Tima nigroannulata」であるかはまだわかりません。全部調べたわけではないですからね。もしかしたら何種類もいたりして…これからしっかりと明らかにする必要があります。身近な海でもまだまだ知らないことばかりです。気を一層引き締めて、一つ一つ解明していきたいと思います。

ギヤマンクラゲは繁殖が確立されており、“えのすい”では一日も欠かさずに展示することができています。こんなニュースの後だと、いつもと見え方も変わってくるかもしれません。ぜひ③の特徴を気にしてみてくださいね。
今年はなんだかヒドロ虫が盛り上がる予感…! たくさんいいニュースが出せるようにこれからも頑張ります!

クラゲサイエンス

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