2021年06月25日
トリーター:唐亀

ルアー釣りをするシマイシガニの話

シマイシガニシマイシガニ

生き物と接しているとまれに面白い行動を見ることがあります。カニが魚を釣ろうとしたのを見たことがあります。

現在のシラスサイエンスのカタクチイワシ親を飼育している砂地の水槽は、かつてシロギスやホウボウ、ヒメジなどの砂地の魚を中心に、ブリなどの回遊魚やイセエビも収容していました。
向かって右側には岩盤状の擬岩が壁に沿って取り付けられていて、その隙間にはシマイシガニがすんでいました。甲幅 15㎝程度でかなり大きな個体でした。もともと、テーマ水槽で展示していたものですが、この水槽でくらすことになったのです。

シマイシガニはワタリガニの仲間で、五番目の脚が平たくオール状の遊泳脚になっていて、それを使って泳ぎ回ることができます。動きが速く、気が荒いカニで、不用意に手を出すとハサミ脚を振り上げて攻撃を仕掛けてきます。ハサミ脚は鋭い棘があり、挟むだけではなく切り裂くこともできます。

ある時、この水槽に給餌をしておりました。餌はイカやマグロをいろいろな大きさに切り分けたものや、むきエビ、むきアサリ、オキアミ、コマセアミなどを与えています。
この時、シマイシガニにイカの細切り(幅1㎝位、長さ10㎝位)を与えた時です。普通そのまま餌を持ち去り、食べ始めるのですがこの時は違いました。第2,3,4歩脚を突っ張って体を高く水平に保ち、遊泳脚を持ち上げ広げました。体勢としてはやや前のめりな感じです。両方のハサミ脚はやや開き気味に目の前で構え、確か右側のハサミにイカの細切りの端を挟んで前に垂らし、小刻みに上下させてイカを動かしました。

するとイカの動きにシロギスが反応して集まってきました。そして間合いが詰まってきた瞬間、シマイシガニがシロギスに抱きつこうと襲いかかりました。間一髪、シロギスは逃げ去りましたが、まるでルアー釣りのような行動でした。
ただ、この後同じ行動を見ていないので、たまたま偶然だったのかもしれません。夢は見ていないと思います。

相模湾ゾーン

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