2021年08月27日
トリーター:加登岡

初めてのテーマ水槽

8月も残りわずかですね。
この夏は涼しくなったかと思ったら、また暑くなるそんな夏でしたね。
8月は自身初のテーマ水槽の担当でした。
調査研究を題材に展示生物を考えたり、レイアウトを考えたりと準備を進めていました。
構想の段階ではノートになんとなく箇条書きにレイアウトを書き、それを具体的にするためにどうするか考えていきます。
ちなみにこんな感じで書きました。


昨年、伊藤トリーターと江の島でカニの調査した時に見た環境を再現したいなと思い構想を練りました。
潮間帯で岩の隙間に隠れているイワガニや、草の茂みに隠れているアカテガニなどを見せる展示です。
90cm水槽の水位を低くして、陸場と水中の両方を作ろうと思いました。
砂をただ盛っただけでは徐々に陸場が崩れてしまうため、どうするか考えました。
その結果、アクリル板を曲げて傾斜を作り、シリコンと砂で表面をコーティングして砂地を再現しました。
そのため写真の赤丸部分は実は空洞です。
どうでしょうか?アクリルの板ではなく砂地に見えるでしょうか?


後ろの擬岩も建築資材の断熱材を凸凹に手でちぎり、溝を掘り、シリコンと砂でコーティングしています。
溝にカニが入ってくれることを願って作りました。実際、時々入ってくれています。

その他の展示では、イヌザメの卵の発生過程を見てもらいたく、イラストのような卵展示の板を作りました。



アクリルパネルを加工して、卵を収容できるようにして、水中ライトで後ろから照らすことで、卵の中を見ることができるようにしています。
これが一番準備に時間がかかっています。といっても卵の準備です。
展示の日を逆算して、採卵し、バックヤードで育てていました。月ごとに採卵することで、卵の発生段階をずらして展示できるようになっています。こんな形でイラストから実物へと変えていきます。
サメ好きな私は以前からなんとか卵の発生過程を展示できないかとずっと思っており、ようやく形にできて展示です。

そして、もう一つサメ好きならではとしては、ハナカケトラザメの展示です。
国内の水族館でもあまり飼育されていない、ヨーロッパなど大西洋に生息しているサメです。


学生時代にトラザメの性ステロイドホルモンの研究をしており、似た種で先行研究がないか調べていた時に、このハナカケトラザメの学名 Scyliorhinus canicular をよく文献で見かけました。
その時は実際どんなサメなのだろうと思っていましたが、こうやって関わることができてうれしく思っています。

その他にもえのすいの調査研究に関わる生物の展示をしています。
私の初めてのテーマ水槽も8月末までなので、残す所もあとわずかですが、みなさん見逃しがないようご覧いただければ嬉しいです。
お待ちしております。

テーマ水槽

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