2021年09月23日
トリーター:加登岡

一年の経過

とある生物を飼育し始めてから一年が経ちました。
そのとある生物とはイソバナの仲間です。
イソバナの仲間は八放サンゴの仲間で、自然界では潮通しのよい場所に生息しています。
このイソバナの仲間は、飼育が難しいと先輩トリーターから聞かされていたのですが、水槽の展示コンセプト的にどうしても展示したいと一年前に水槽の仲間入りをしました。


こちらは展示当初の写真です。
この水槽には当時、マンジュウイシモチやチンアナゴ、ヤギの仲間が一緒に展示されていました。
その時の配置がこちらです。


赤とオレンジの2種類のイソバナの仲間を同時に展示していました。
それぞれ種類が違うようで、赤い方は日中に、オレンジの方は夜間にポリプを出しています。
イソバナを始め、八放サンゴの仲間は種類を同定するためには骨片というからだを作る組織を顕微鏡で観察し、その骨片の形や並び方から種類を同定します。そのため、ぱっと見で判断ができない難しさがあります。

当初はポリプを出してとても状態が良さそうでした。
がしかし、赤い方は次第にポロポロ枝が折れるような感じで、崩れるようになってしまいました。
水質の問題か?
餌が行き渡っていないのか?
はたまた水流が良くないのか?
サンゴ初心者の私はあたふた。
オレンジ色の方は特になんともなく、その他のヤギ類も特にこれといって問題はなく、水質も悪くありませんでした。
そこで、水流と餌を変えてみることにしました。
これまで、他のヤギ類やチンアナゴが同居していたため、ブラインシュリンプを水槽に入れていました。
オレンジ色の方と比べると、赤い方はさらにポリプの大きさが小さかったため、ブラインシュリンプよりもさらに小さいワムシを直接吹きかけるようにしました。
また、配置もちょうど展示替えがあったため、場所を移動させ、オレンジの上に配置しました。


これで崩壊がとまってくれれば・・・
位置としては、流れが強い場所となっています。
移動後もしばらくはボロボロと折れてしまいました。
しかし、時間とともに崩壊が止まり、一安心できる状態に。
正直そのまま全て崩れてしまうのではと危惧していました。
そして、今月でちょうど展示から一年が経ちました。
いまではこんな感じです。


正直なところ、一時の崩壊でかなりボリュームが落ちてしまったのですが、横に広がって成長してくれています。
マイナスからプラスへと少しずつですが向かってくれています。
とりあえず一年。さらにもう一年後にはここから大きく広がってくれることを願って毎日の給餌をしています。

サンゴの仲間は表情がうかがえないため、状態の良し悪しの判断がすごく難しく感じます。その分、目に見えて成長してくれると嬉しいです。
この水槽には他にもトゲトサカなどの仲間やヤギの仲間など八放サンゴの仲間がたくさんいます。
ぜひ、生き物でないようで生き物なサンゴの成長を見届けてください(オレンジ色のイソバナの仲間はさらに場所を移動して、写真の裏側の岩にくっついて成長中です。)


P.S. テーマ水槽で展示していたイヌザメの卵ですが、 5月 8日に産卵していた卵は 9月 11日に無事にふ化しました。
ふ化までに実に 127日かかりました。
見守ってくれていたみなさま、ありがとうございました。

太平洋

RSS