きらきら輝く光のクリスマステーマ水槽では、季節のテーマに沿った生物を展示しています。
今回のテーマは、クリスマス。
イルミネーションやオーナメントの輝きに関連付けて生物の発光を展示することにしました。
生物が光るにはいくつかの方法があります。
一つは発光する化学物質を出して光を生み出す「ルシフェリン-ルシフェラーゼ反応」を使う方法。
さらに、蛍光タンパク質を体の中に持ち、紫外線に当たることで光る方法などがあります。
例えば、今回のテーマ水槽で展示しているヒカリキンメダイは、とても小さな光る細菌(発光バクテリア)を眼の下の発光器に共生させて、それを反転させることで目の下がチカチカと点滅するように光って見えます。
ヒカリキンメダイ
ヒカリキンメダイが光るのは、仲間とコミュニケーションを取る、餌を見やすくするなどの理由が考えられていますが、とても臆病な性格で明るい場所では光らなかったり、餌を食べなくなったりします。
テーマ水槽周辺は、屋外からの光も差し込んで明るいので、アクリル面をのぞき穴にする工夫を施しました。
さらに遮光シートを貼り付けて暗い環境を作り出すことで発光のようすも観察できるようになりました。
ヒカリキンメダイの隣の水槽では、同じく細菌に頼る発光器を持つマツカサウオを展示しています。
松ぼっくりのような見た目からマツカサウオと名付けられたそうですが、体色が黄色くてクリスマスのオーナメントのような見た目をしています。
さらにこの水槽には、ヒイラギが同居しています。
クリスマスリースなどに使われる柊(ひいらぎ)と同じ名前で、柊のようにトゲトゲとしているところから名付られたそうです。
ちなみにヒイラギも光ります。ただ、お腹の中が発光するため、真っ暗な場所で観察しても発光のようすはわかりませんでした。(本来はお腹の中の光が体を透過して見えるようです。)
展示が一番大変だったのは、ウミホタルです。
ウミホタルは「ルシフェリン-ルシフェラーゼ反応」で光を出すことができる 2-5㎜の生物です。
常に光っているのではなく、驚いたときに発光物質を体から出し、それが酵素と反応することで青い光が発生します。
ウミホタルの発光
驚かせる方法として、電気ショックを与える、冷たい海水を入れるなどの方法がありますが、私が定期的に電気や冷たい海水を加えるのでは、ずっとテーマ水槽に張り付いていなければならなくなってしまいます。そこで考えたのが、こちらのシステムです。
ウミホタル発光装置図
これは、自動的に一定の間隔で大量の冷たい海水を水槽へ入れる装置です。
簡単に説明すると、ろ過槽の水中ポンプで発光装置に海水( 15℃)を溜めていき、発光装置の中が満たされると、装置内のほぼすべての海水が勢いよく水槽内( 26℃)へ流れ込みます。
この水温の変化に驚いてウミホタルが発光物質を出すという仕組みです。ろ過槽の水中ポンプをタイマーで制御しているので、ウミホタルの休憩時間も確保することができます。
本テーマ水槽は12月25日までの期間限定展示ですが、遮光シートやこの装置を応用すれば、常設の展示水槽でもさまざまな発光生物を展示できるかもしれません。
光る頻度などまだ課題はありますが、生物の魅力を伝えるために新たな挑戦を続けていきます。