2021年12月27日
トリーター:黒川

飼育員に必要な勉強

将来の夢について考え始める小学生や中学生の方から、時々こんな質問を受けることがあります。
「水族館の飼育員になるには、どんな勉強をしておけばいいですか?大学や専門学校で勉強するから、今は勉強しなくてもいいですか?」
いえいえ、そんなことはないですよ。
私は飼育員になってから、「あぁ~しっかり勉強しておけばよかった~」と思う場面に多々遭遇しているので、今回のトリーター日誌では、「みんなは、私みたいになるなよっ!(涙)」という想いを込めて、小・中学生さん向けに、勉強しておいた方がよいことを紹介していきます。

国語
飼育員は、文章を書くことが意外と多いです。生き物の解説文を作ったり、生き物について新聞や雑誌の記事を書いたり、きょうの生き物たちの状態を、明日出勤のメンバーにメールや日誌で正確に伝えたり、このトリーター日誌もしかり。研究結果を発表するときには、資料の作成もします。また、研究者の方や他の園館のスタッフの人と情報交換する機会も多いので、コミュニケーションスキルも必要です!

算数
めちゃめちゃ使います。魚の治療をするときには、魚の体重に対して、何グラムの薬を準備すればいいのか、水槽の水量に対して何ミリリットル投薬するのか。その魚に適した○パーミルの海水を作るには、何キロの塩(人工海水)を入れればいいのか、水温を○度下げるのに何℃の水を何リットル足すのか、いろんな場面で計算するので、算数は勉強しておくべし!です!

英語
これが一番の「やっておけばよかった、、、」かもしれません。海外からいらっしゃったお客さまにも、分かりやすく解説をしなくてはいけませんし、自分が必要なデータや情報が、英論文にのっていることもあります。そして、飼育員はみな、当たり前のように英語を話せる人ばかりです。ある先輩は、英語で発表もしていました。とっさの場面でもあたふたしないよう、ぜひ勉強しておいてください!

理科
当たり前にとっても必要です。例えば、死亡してしまった魚の解剖をするとき、どこにどの臓器があって、どんな役割をしているかを知っていると、病気の目星もつきやすく、治療もしやすいです。
授業で使ってそれっきりだった顕微鏡も、飼育員はしょっちゅう使うし、「アサガオの観察」のような、生き物を毎日観察し、どんな変化があったか記録しておくことは、飼育員の土台となる力になります!

図工・美術
水槽のレイアウトは手作りすることが多いのです。一から擬岩を作ったり、魚やウミガメを仕切っておくカゴや柵などを作ったり、水槽台や作業台を作ったり。また水槽の中に、自然界の景色を作りだすのも美的センスが問われるし、解説用の魚のイラストを書くこともあります。生き物の魅力が伝わるような、迫力ある写真を撮るのも、美術のセンスが必要だなと、写真を撮るたび思います。

体育
飼育員は体力仕事です!魚を移動させる時は、必ず水と一緒に移動させるので、重たい!水槽も空っぽであっても、そこそこ重たい!潜水作業をするときに使う、酸素ボンベも重たい!
私の担当生物の中にウミガメがいますが、体重が100キロ近くあるウミガメを移動させるのはまさに力仕事。もう、重たい!!!!また、水を扱う仕事が圧倒的に多いので、どんな作業でも体が冷えて、寒い!大がかりな展示変更は、お客さまがいない閉館後からスタートするので、夜遅くまで作業をするし、朝も比較的早いです。
体力がないとなかなかキツイ仕事です。私は毎日ヘロヘロです。
ほかにも、水中で美しく泳ぐには、ある程度筋肉が必要ですし、サメなど大きな生き物の取り上げをおこなうときには、機敏に動ける運動神経も必要です。体力つけておきましょう!

水族館の飼育員は、生き物の知識さえあればOK!というわけではなく、実は学校で習ったことがとても役に立ちます。オールマイティーになんでも勉強して、いろいろな経験が必要なんですね。
しかも、一番重要な生き物たちの情報は膨大で、常に新しく更新されつづけるので、どんなベテランの飼育員でも空いた時間を見つけては、本や論文を読んで勉強しています。
本当に大変な職業です。
でも、そんな自分の仕事を誇らしく思うし、とてもやりがいのある仕事なんですよね。

きょうから冬休みに入る学校も多いと聞きました。
冬休みの宿題にテンションが下がっている小・中学生のみなさん、どんな授業や経験も、将来きっと役に立つので、頑張ってくださいね!!

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