2022年02月10日
トリーター:羽田

「ヒミコ」との新たな挑戦

今年の4月で“えのすい”に来て10年が経つオタリアの「ヒミコ」。
“えのすい”に来た当初から担当をしていたので、成長を常に隣で見ることができました。

ショーに出る練習がなかなかうまくいかず悩んだ日々もありました。
その時は先輩のオタリアと一緒に練習をすることで、ショーに参加することができたのですが、今では「ヒミコ」より年下のオットセイたちを引っ張る存在になってくれています。

健康管理のために練習した採血は、獣医にも協力してもらい何回も何回も練習しました。
初めて成功した時のことは今でも覚えています。
今では採血だけでなく、体温測定、超音波、レントゲン、目薬など、さまざまなことができるようになりました。

そんな「ヒミコ」と、ここ数か月新たな挑戦をしています。
その話をする前に、まずは「ヒミコ」の顔を見てもらいましょう。

スマートな顔立ちですよね!
オタリアは鼻先が平べったくなっている印象が強いのですが、「ヒミコ」はシュッとしています。

「ヒミコ」の特徴はこれだけでなく、他のオタリアよりも口を大きく開けることができるんです!

大迫力!!
かなり大きく開けてますよね!
ヒゲがピン!と伸びてるのもいい感じです!


新たなチャレンジは、この「口を大きく開ける事ができる」という特技を活かしておこなっています。
何をしているのかというと

「口からチューブを入れる」

ということです。


口からチューブを入れる???
それで何をするの?
と思った方もたくさんいると思います。
これができるとどんなメリットがあるかというと。

①水分補給ができる
②内視鏡(胃カメラ)の検査ができる

健康管理のためには二つともとても重要です。
普段は餌となる魚から水分を得ていますが、それだけでは不足した場合には氷やゼリーを食べさせたりします。
ですが、口から直接チューブを入れることができれば、一度に多くの水分を補給することが可能になります。

また、胃の中を検査しなければいけない状況になった時、チューブを入れることができれば、胃カメラを入れて検査することも可能です。

チューブを入れると簡単にいっても、人間でも胃カメラをする際はとても辛い、という話を聞きます(私は未経験なので分かりませんが・・・)。
それを「ヒミコ」に協力してもらうことができるのか・・・。
正直最初は想像もできなかったんですが、他の水族館で働いている私の尊敬するトレーナーの方が実際にトレーニングをしているという話を聞き、自分もやってみよう!という思いになりました。

数か月前から少しずつトレーニングを開始。
まずは口を開けた状態を維持することから始め、それができたらチューブを歯や口の中に当てても落ち着てくれていることを褒めていきました。

だんだんと口に当たることに慣れてきたら、今度は少しずつチューブを喉の奥に入れていきます。
本当に少しずつ。
「ヒミコ」がいやにならない程度に毎日コツコツと進めていきました。
喉のどの辺りから入れたらスムーズか?
顔の角度はどれくらいがリラックスできるのか?
試行錯誤の繰り返しでした。


そして、現在のようすはこちら

写真のように上手にチューブを入れることができるようになってきています!
入れられる長さはなんと 80cm!
80cmを字で見ても分からないと思うので、写真で見てみると

結構長いですよね!
これが口の中から入ってくると想像したら、私は我慢できないと思います。
「ヒミコ」すごいな。

今はチューブを入れている時間がまだ短いので、これからは入れている時間を少しずつ長くして、チューブから水を入れたり、胃カメラを入れて検査をしたりしようと思っています。

10年前では考えられなかったことができるようになってきました。
「ヒミコ」の成長を見てきたといいましたが、私の方が「ヒミコ」に成長させてもらっています。
これからも健康でいてもらうために、さまざまな検査をできるようにしていきたいと思います。

イルカショースタジアム

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