2022年02月25日
トリーター:小森

あなたの大切なものはなんですか? ~クラゲチームの場合~

突然ですが、みなさんの大切なものはなんですか?
私は家にいる猫と犬です。
特に猫がかわいすぎて耳をかじったりヒゲをかじったりしちゃいます。向こうもグルグルいってくれます。ほんとにかわいい。ラブ。

クラゲチームの大切なものは、ぱっと見 意味が分からないと思います。
それがこちら

私は初めて見たとき、「カビ?」って思いました。
物によっては「枯れた水草?」「茶ゴケ?」なんて思ったりもしました。

これは「ポリプ」といいます。クラゲの大元、むしろこれがクラゲといっても過言ではありません。
まさに「鶏が先か、卵が先か」論です。このポリプたちを失ってしまうと、私たちのクラゲ入手ルートは購入もしくは採集しかなくなり、さまざまな種類のクラゲをみなさんにご紹介することも生態を知ることもできなくなってしまうのです!!!まぁ大変!!!

こんな、素人から見ると「今すぐ洗ってきれいにしたい!!」と思わせるようなものから 1mm~ 30cmほどのクラゲが育つんですよ?
不思議ですよね。

そして、クラゲが出てくるということは、このわけのわからないポリプたちもしっかり生きているということ。
そのため、アルテミア(ブラインシュリンプ)という、とっっっっっても小さい甲殻類を餌としてあげています。
それをポリプがしっかりキャッチして食べるんです。私たち同様、食べれば食べるほどフクフクと育ち、まるまるしてきたところで 1mmほどのクラゲや、エフィラを放出するのです。

ちなみに、1つのポリプから出るクラゲは同じ遺伝子、すなわちクローンが大量に生まれます。
そして恐ろしいことに、ポリプは粉砕されようが擦りちぎれようが、復活するものは復活するんです…!
え、もうこれエイリアンじゃありません?地球に住んでるってだけでエイリアンじゃありません?
こんな生き物ってありなの?
ついつい人間基準で「生」を捉えてしまいがちですが、私たちの想像も及ばない生命体は地球にも実はたくさんいるのです!!

そんな感じで不思議なポリプたち。
最初はわけのわからなかった物体でしたが、時間が経てば経つほどなんだかかわいく見えてくるんですよね。
たとえばサムクラゲのポリプ。だんだん洗脳されてくると、ぷるんっとしているし薄く色づいてもいるしでかわいく見えてきます。

↓サムクラゲ

そんなかわいいポリプをせっかくなので拡大して見てみましょう。

うわぁ、拡大するとぷるんっていうよりもなんだかぶりんぶりんで思ったよりかわいくありませんでした。
でもこのように拡大してみると実際の姿が見えてきて面白いですね!
せっかくなのでいろいろなクラゲのポリプをご紹介しようと思います。
写真がいっぱいのかなり長い日誌になってしまいましたが、興味のある方はこのまま続きをご覧ください↓↓↓(^^)

まずは定番のミズクラゲ。

拡大するとこんな感じ↓

まさかこんな見た目をしていたとは!て感じですね。
なんだかイソギンチャクみたい?と思ったそこのあなたはお目が高い。イソギンチャクもクラゲも同じ刺胞動物門に分類されています。
※カブトクラゲやチョウクラゲは刺胞動物門ではなく有櫛(ゆうしつ)動物門になるのですが、ややこしくなるので今回は触れません!

次は水色がかわいらしいキャノンボールジェリ―。

なんとなく小汚い感じ…ですが、拡大してみると?

ストロビラ(上:ポリプが成長した姿)とポリプ(下)が見えていますね。ちなみにポリプの下に入り込んでいるのは遊離したてのエフィラです。今は赤色ですが、成長すると水色になります。いろいろな状態が見られて賑やかで楽しいですね。小汚いなんていってごめんなさい。

こちらはコブエイレネクラゲ。



なんだかもさもさ…


拡大してみてももさっとしてますね。もっと拡大すると…



なんとお花のようなものが!
これは「ヒドロ花(か)」といい、ここで餌をキャッチして食べています。
また、ストロビレーションを起こすミズクラゲやキャノンボールジェリ―と違い、エフィラではなく最初から小さいクラゲが出てきます。せっかくなのでくっついているクラゲはいないかなーと探してみましたが、残念ながらいませんでした。

その代わりに!
“えのすい”のクラゲサイエンスにて展示中のギヤマンクラゲのポリプに子クラゲがくっついているようすを動画で撮ることができたのでご紹介!


きっとね、ここの展示って通り過ぎちゃう人も多いと思うんです(涙)
でも、よーく目を凝らすと、運が良ければこのようにクラゲが生まれる瞬間を見ることができるんですよ!!!!
顕微鏡がなくても目視可能です。
今度来たときはよぉぉぉぉぉぉぉく覗いてみてください。

それでは次。こちらはシンブルジェリー


面白い姿のクラゲです。そんなクラゲのポリプは…



今までのものと違って面白い姿をしています。拡大しましょう。


まさに枯れた水草のような、ここからどうやってエフィラが出てくるの?といった見た目ですね。私もまだ見たことがないので出てくる時が楽しみです!

最後にこちらはバックヤードの水槽に勝手に生えてきたもしゃもしゃたち。


草原のよう。拡大するとこんな感じ。


これはいったい何のクラゲになるかというと、なんとクラゲにならないんですよ。
いよいよ意味がわかりませんね。だってコブエイレネクラゲやギヤマンクラゲにそっくりじゃないですか。
でもね、このもしゃもしゃからはクラゲは出ないんです。そういう種類なんです。
こやつら、どんなに水槽を掃除してもいつの間にかもしゃもしゃ生えてきます。塩素で退治してもいつのまにかもしゃもしゃ生えてきます。濾過槽にも配管にもありとあらゆるところでもしゃもしゃして、水の通りを悪くしてしまうこともあります。そして、クラゲやイソギンチャクの仲間であるため毒があり(つまり、先ほどまでのポリプにも毒はあります!)、その毒にクラゲがやられてしまうため、このもしゃもしゃの勢力が拡大するとクラゲが弱ってしまうという、飼育者からするととんでもない困ったちゃんなのです。

何とも不思議なくらげの世界。
知れば知るほど、どんどん意味が分からなくなります。
次回もわけのわからない世界に一緒に行きましょう。





クラゲサイエンス

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