2022年02月28日
トリーター:山本

日本初!サカナヤドリヒドラ類のクラゲ展示開始です!

“えのすい”クラゲチームからの大ニュース!
きょうからクラゲサイエンスで、世界的にも超貴重なクラゲ「サカナヤドリヒドラ属の一種」の展示を開始しました!
※サカナヤドリヒドラの展示は終了いたしました。
なんだか名前が長くて小さい(4mmくらい)この謎のクラゲが、一体どうして貴重なのかというと...このクラゲが確認されたのは、日本で初めてのことだからなのです!

ことの始まりは、私が江の島で出会った1匹のボラからでした。水面でぽやぽや泳いでいたそのボラの背中にふと違和感が。網でぱっとすくってみると…なんかクラゲのポリプ?みたいなのがたくさんついている…。

わあすごい。持ち帰ってすぐに顕微鏡で観察してみましたが、クラゲのポリプらしい触手が見当たらず、何の生き物だかさっぱりわかりません(正直私は最初コケムシの仲間?と思っていました…)。
そこで、研究者の方にも協力していただきながらいろいろ調べてみると、たどり着いたのが「サカナヤドリヒドラ(Hydrichthys pacificus)」という生き物。
サカナヤドリヒドラは、ヒドロ虫綱・花クラゲ目・エボシクラゲ科に属する立派なクラゲの仲間で、ポリプがその名の通り魚に寄生します。1941年に和歌山県で新種として記載された時以降研究がほとんど進んでおらず、ポリプの姿は知られていますが、いまだに生殖体(クラゲ)は確認されていません。
本種が属するHydrichthys属には、他に 5種が含まれますが、これまで日本で見つかっているのはサカナヤドリヒドラH. pacificus 1種のみです。


このボラとの出会いをきっかけに、「魚に寄生するポリプ」の存在を意識して海を見てみると、意外と寄生されている魚っているみたいです。
この魚と密接に関わるヒドロ虫について魚類担当の先輩方にも聞いてみると「あーーーいわれてみれば見たことあるかも…!」と、いろいろな方面から情報が集まってきました。
私はどうしても99.9%くらいクラゲに偏った視点になってしまうので、この先輩方からの魚視点の情報がとてもありがたいです。
そして数日後、別の場所でもこの仲間と思われるポリプに寄生されたカゴカキダイの幼魚を採集することができました。

これまたすごい。こちらの個体は目の付近に寄生されていました。
このカゴカキダイをバックヤードでしばらく飼育していると、なんと飼育容器の中に0.5mmくらいのクラゲが泳いでいるではありませんか!そこで、育ててみると…

一か月でこんなクラゲに育ちました!
エボシクラゲ科に属するので、大きさは全然違いますが、やっぱり何となくエボシクラゲ↓に似ています。

先にも書きましたが、日本で唯一見つかっているサカナヤドリヒドラの生殖体(クラゲ)は、これまで見つかっていません。情報があまりにも少ないため、今回わたしたちが得たこの種がサカナヤドリヒドラH. pacificusであるかどうかはまだわかっていませんが(もちろん他の種の可能性もあります)、いずれにしろこの仲間のクラゲを日本で確認し、育てながらしっかりと観察できたのは史上初のこと!というわけなのです。
おそらく展示も初めてのこととなるでしょう。多分この仲間のクラゲを見たことがある人は、世界中を探してもほとんどいないと思います。
偶然の発見から得られたこの貴重なクラゲを生きた状態で!ぜひみなさまに見ていただきたい!!
という気持ちで、正体が分かり切っていないこの状況での発表・展示に至りました。
いろいろあって、寄生された魚はまだ展示に出せないのですが、いずれはみなさまにお見せしたいと思っています。ひとまず魚に宿るおもしろヒドロ虫の姿をぜひご覧ください。

クラゲサイエンスのここで展示しています。今のところ、少なくとも一ヶ月は生きてくれておりますが、なるべく長く展示できるように頑張ります。
分かっていることが少ないため、今はまだ公開できる情報がどうしても限られてしまいますが、現在専門家の方と研究真っ最中!
みなさまにこの種の魅力をたっぷりお伝えできる日が楽しみです。
今後の進展にぜひともご期待ください!

クラゲサイエンス

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