2022年03月07日
トリーター:西川

ハタハタの赤ちゃんが生まれました!

ハタハタの赤ちゃんハタハタの赤ちゃん

今年の 1月28日から「太平洋」の冷たい海の水槽で、ハタハタを展示しています。
ハタハタというと秋田県でよく利用されていることから、日本海にのみ生息していると思われがちですが、実は茨城県以北の太平洋にも生息しています。そのため関東で展示された記録は少なく、3月7日現在で展示しているのは“えのすい”だけです。

ハタハタの展示に踏み切ったのは、その魅力を知ってもらいたいと思ったからです。
ハタハタはとても美味しい魚で、ここ藤沢市内のスーパーにも、アジやタラと並んで販売されることがあります。しかしその姿を見ても、みなさんは何の特徴もない魚だと思うでしょう。
確かにサバやタイと比較すると、銀色に茶色のまだら模様が入った体色は地味かもしれませんが、生きている姿をみるとそのギャップに驚くはずです。

ハタハタハタハタ

まず、ハタハタはあまり泳ぐ魚ではありません。
形は同じ水槽にいるスケトウダラと似ていますが、スケトウダラが水槽の中層から水面辺りを泳ぐのに対して、ハタハタは水底で生活します。
さらに砂に潜ることができる魚で、どちらかといえば泳いでいる時間よりも、砂に潜っている時間の方が多そうです。
展示しているハタハタのほとんどが、砂に潜っていて口先しか見えません。こうなると砂から出てくるのは、なにかに驚いたときかエサの時だけです。
どうやって潜るのか観察すると、胴体と大きな胸びれを動かすことで少しずつ砂を掘るようにして潜っているようです。この砂堀りをしているところが一生懸命で愛嬌があります。
ここで使う大きな胸びれは泳ぐ際にも重要で、推進力のほとんどはこの胸びれで作り出しています。
アジやサバは尾びれを素早く動かして泳ぎますが、ハタハタの尾びれは方向を変えるための舵のような役割をしているため、ほとんど動きません。その代わりに大きい胸びれをゆっくりと動かして、まるで水中を羽ばたくように優雅に泳ぎます。
ふわっと浮かんで沈むころにもう一度ふわっと浮かぶ、そのようすはゆったり泳ぐクラゲのようでとても癒されます。

砂に潜っているようす砂に潜っているようす大きな胸びれ大きな胸びれ

そんな魅力いっぱいのハタハタは、卵も少し変わっています。
水深 100~400m付近で生活してるハタハタは、産卵期になると繁殖のために、水深 2~10mほどの浅瀬まで移動してきます。
そして、海藻に卵を産み付けます。その卵は 1~3㎜ですが、卵同士がくっついてゴルフボール状の卵塊になります。

ハタハタの卵ハタハタの卵

この卵塊から一粒取り出して触ってみましたが、指でつぶそうと思っても硬く強固な卵膜に守られていてつぶすことができません。ハサミで切ってみても、イクラのように弾けることはなく、カプセル状の卵膜が残っただけでした。
こんなに強い膜の中からどうやって出てくるのか疑問に思いましたが、その数日後無事にハタハタの赤ちゃんがふ化しました。
それから数日間、一日に 40~70匹がふ化しました。
他の魚の稚魚と比較すると、大きく泳ぎも力強いです。さらに群れを作って身を守っているように見えます。
ちなみにハタハタの稚魚は、まだ砂に潜らず泳ぎまわります。
親のハタハタとは違って透明な体で、お腹だけ赤っぽいです。これはヨークサックといって、生まれたての稚魚の栄養になるものです。少しずつ吸収されていき、全て吸収されるころには、エサを活発に食べるようになります。そしてこのまま成長していけば、半年ほどで親と同じような見た目になります。

現在、ヨークサックを持つ赤ちゃんの姿をみなさんにも見ていただこうと展示方法を模索中です。ハタハタの赤ちゃんが長く生きられるように、きれいに観察できるように奮闘しておりますので、展示までしばらくお待ちください。

※ハタハタおよび、ハタハタの卵は 青森県営 浅虫水族館 のご協力で当館へ搬入されました。ハタハタの赤ちゃんは搬入された卵から、“えのすい”でふ化しました。

太平洋

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