2022年03月21日
トリーター:八巻

水中ドローン調査ライブ中継!

みなさんこんにちは!八巻です。
今回は本日おこなったイベント「水中ドローン潜航調査ライブ中継~江の島編~ Vol. 0」のようすをご紹介しましょう。
調査をそのままライブ中継しちゃおうという、「オンライン」、「リモート」全盛の今だからこそできる、もとい思いついたイベントです!
もともと私たちトリーターの大切な仕事のひとつに、フィールドに出ておこなう調査があります。
なぜフィールドでの調査が必要なのかというと、図鑑だけでは分からない、「調査地での“今現在の”生物相やそこにすむ生き物のようす、行動、生態」を観察し、そのリアルな情報をみなさまにお伝えしたいからです。

しかし一方で、調査に行ける人数は限られますし、船舶や大型の調査機器など、誰でも気軽に行ける場所、使える調査器具だけではすまないことがほとんどです。特に深海を対象とした調査はその傾向がつよいといえます。ましてや調査のリアルなようすをお客さまに知っていただく機会は、ときどきトリーター日誌や調査日誌に書く他ほとんどありませんでした。
 
私たちは2年前から水中ドローンを用いて相模湾江の島沖水深 150-300 m域の大陸斜面における生物相調査を続けてきています。79年ぶりの相模湾におけるコトクラゲの再発見など、これまでも何度かその面白さや成果の一部をトリーター日誌でお伝えしてきました。先日オンラインでおこなわれた第69回日本生態学会大会でも概要をご紹介させていただきました。
相模湾は当館のテーマにもなっている重要な海域で、前述の通りそこにすむリアルな生き物とそのようすを知ること、そしてそれをみなさまへお伝えすることは、私たちの最も大切なミッションのひとつなのです。
もとより、当海域で調査をしていると、とても多様性に富んだ生物相、また起伏に富んだ海底のようすなどはとても面白く、その面白さをぜひ多くの方にお伝えしたい!と心から思っていました。

そこで今年度は、調査に行くことで感じられる臨場感や面白さ、おこなってみないと分からないワクワク感を一緒に感じられるイベントとして「水中ドローン潜航調査ライブ中継イベント」を企画しました!
方法は簡単です。元々現在使用しているFullDepth社の水中ドローンDiveUnit300には調査映像をネット経由で見ることのできる機能がついており、それにプラスしてZoomで船上のようすや現場の臨場感をお伝えするというものです。

今回は初めてということで、まずは当館に併設している「なぎさの体験学習館」にそれらの映像を送り、プロジェクタで大きく映しながら、陸上スタッフと連携して体験学習館に集まったお客さまに調査の面白さをお伝えするという試みでしたが、約 30名の方が参加してくださいました!

幸い海況、天候ともに恵まれて、最高の“ライブ中継日和”でした!私は船上でのMCを担当し、船の上の臨場感を体験学習館の会場へ伝えるという大切な役割です。初めてのことで、うまくいくかとても不安でした。しかし、始まってしまえばただ普通に楽しい調査のようすをそのままお伝えするだけの簡単なお仕事でした(笑)
いつも調査をおこなっている海域ですが、やはりおこなってみないと海底や生き物のようすは分からないものです。

しかし、結果的に今回は魚類はじめたくさんの生き物を観察することができ、会場でもとても盛りあがったようです。船の上では太陽の光で案外パソコンのディスプレイが見にくく、会場の方がきれいに海底や生き物を観察できたとも聞きました。
後から陸上のスタッフに聞いたお客さまのようすも、とても楽しんでいらっしゃったようでしたとのことで、安心したと同時にとても嬉しかったです!
そして「調査のライブ配信」というこれまでなかった、オンライン、リモートを活用した新しい展示のかたちを提案することができたように感じています。

実は今回は“Vol.0”ということで序章にすぎません!来年度も同様のイベントをおこなっていこうと考えています。また具体化したらお知らせしていきますので、今後ともよろしくお願いいたします。

なお、本調査、イベントは関連海域の漁協の方々、神奈川県、静岡県の関係者の方々のご理解のもと、おこなうことができています。今後も調査を続け、相模湾の生物相の解明と普及に努めていきます。




本調査研究は、船の科学館「海の学びミュージアムサポート」の支援を受けて実施しています。

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