2022年09月14日
トリーター:杉村

相模湾の塩分って知ってますか?

“えのすい”では、生き物を飼育して展示する以外にさまざまな取り組みをしています。
そのひとつが、さまざまな研究機関や企業との共同研究です。
この共同研究の成果は、生き物たちの飼育にフィードバックしています。

現在“えのすい”がおこなっている共同研究は、国立研究開発法人海洋研究開発機構(以下「JAMSTEC」)との深海生物に関する研究をはじめとし、その内容も飼育に直結するものから海洋環境に至るまでさまざまです。
その中のひとつが、今回のタイトルになっている「相模湾の塩分」の測定です。

みなさんは海の塩分って、いったいどのくらいになるのかご存知ですか?
この夏、海水浴に行ったみなさんはきっと・・・海水飲んでいますよね。
海水って“しょっぱ、苦い”ですよね?
海水の中には、水を主成分にさまざまなものが溶け込んでいます。
その中で一番多く含まれているのがいわゆる塩分で、その濃度は・・・日本周辺では 3.4~ 3.5%ほどなのです。
ちなみにイスラエルの国境近くにある「死海」は塩分が約 30%にもなります。
ここまでくると浮き輪なしで人間は浮いてしまうほどの濃度になります。
世界でみてみると海域や水深などによって、3.1~ 3.8%と幅広くなります。
・・・興味をもった方は、ぜひ“海洋学”などの海に関する学問の扉をたたいてみてください・・・

本題に戻りますが、“えのすい”の水槽で使っている海水は、そのほとんどが水族館の目の前の相模湾の海水を使っています。
海水の塩分の変化は海の生き物たちにとって、身体を健康に維持するためにもとても重要で、海水の塩分が大きく変化すると水族館に補給している海水を止めているほどです。
そこで今回の試みは、海から汲み上げて貯めている海水タンク内にセンサーを設置して、海水の塩分の変化を調べて、生き物たちの飼育に活かそう!というものです。

そのセンサーを開発し、現在共同研究をおこなっているのが、海洋観測機器の開発・製造をおこなっているオフショアテクノロジーズという、JAMSTECで技術開発を担当する技術者で立ち上げられたベンチャー企業です。
我々がアナログな機器を使ってコツコツ測定していた塩分を、開発したセンサーを使うことで経時変化をPCに記録と出力をしてくれるという夢のような機器なんです。
しかも、超高精度で!
現在はまだ開発中ですが、記録したデータをインターネットを経由していつでも好きな時に塩分を確認することができます。
これによって、塩分が大きく変化する前に補給海水を調整して、飼育している生き物への影響を未然に防ぐことができるようになってきました。

さらに、この試みの中でいくつか分かったことがあります。
水族館で主に使用している海水の塩分は、3.2~ 3.3%であること、そしてもうひとつとても興味深いことに気づきました。
大雨が降れば塩分は下がりますよね、これは専門家でなくても予想はつきます。
ですがそれとは別に、“えのすい”の目の前では西や南西の強い風が吹くと雨が降っていなくても、塩分が大きく変化していました。・・・風の影響が強いのかもしれない・・・
実は、このことは以前から予想はしていましたが、今回の共同研究で真実味が出てきました!
やっぱり研究って、サイエンスってすごいですね!
考えていたことが、目の前で測定値という”数字”ではっきりしてくるとワクワクします。
そして、塩分が下がる時は水温が上がり、塩分が上がる時は水温が下がる傾向があることも新たに分かってきました。※このセンサーは、水温も同時に記録されています。

データ協力:オフショアテクノロジーズデータ協力:オフショアテクノロジーズ

“えのすい”前の海水は、水族館より西にある相模川や酒匂川などの大きな川の影響が風向きによって変化しているのではないか・・・。
まだまだ設備的な要素や実際の海洋環境との整合性などの詳細な解析は必要なので確定的なことはいえませんが、少なくとも可能性は高いと考えています。

このことから、今は予報や出勤時の風向き、強さによって直ぐに塩分をチェックして、海水の補給量を決めるようにしています。
調べるってとても大切ですね。
この先は、“えのすい”独自の水質チェックシステムに発展したら、生き物も我々もとてもハッピーですね。

これからも継続観測して、より良いシステムを目指せればと思います。
合わせて、生き物の飼育にさらに活用できたらと考えています。
今後が楽しみです。

画像協力:オフショアテクノロジーズ画像協力:オフショアテクノロジーズ画像協力:オフショアテクノロジーズ画像協力:オフショアテクノロジーズ

相模湾ゾーン

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